シアターΧ(カイ) 詩のカイ

第1回 講演
詩は生き延びるよすがとなるのか
──マンデリシターム、アフマートワ、石原吉郎、その他
講師 斉藤毅(ロシア文学者)
2020年11月30日(月) 19時より

講師より

詩について改めて考えるとき、それを単に「何かを伝える言葉」、「メッセージ」として捉えるのではなく、詩が世界の中でどのように「ある」のかを見ることが大切なように思われます。詩が書かれ、そして読まれるには、そのための「空間」が必要ですが、それはどのようなものなのでしょうか?  そうした詩の「あり」方を、ここではソ連の強制収容所という、ある意味では特殊な、しかし他方では20 世紀という時代を象徴するとも言える事例を出発点に、収容所と直接関わりを持ったロシアと日本の詩人たちを通して考えてみたいと思います。

講師プロフィール

斉藤毅(さいとう・たけし)
大妻女子大学他、非常勤講師。専門はロシア文学・文化。共著に『他者のトポロジー――人文諸学と他者論の現在』(書肆心水)他。 訳書にマンデリシターム『言葉と文化――ポエジーをめぐって』(水声社)他。

〈参考〉

オーシプ・マンデリシターム(1891-1938)

ロシアのアクメイズムを代表するユダヤ系詩人。20世紀初頭のロシア詩の開花、ロシア革命、スターリン独裁、大テロル開始の時代に生き、スターリンを風刺した一篇の詩のために逮捕、流刑。ウラジオストクの収容所で獄中死した。

アンナ・アフマートワ(1889-1966

ソ連の女性詩人。アクメイズムの詩人として出発。柔らかな感性と強靭な思索力で、ソビエト体制下の厳しい時代を生き抜いた。20世紀ロシアの生んだ最大の抒情詩人の一人。

石原吉郎(1915-1977)

詩人。静岡県生。東京外語卒。1939年応召。北方情報要員として露語教育隊へ。敗戦後シベリア抑留。49年反ソ・スパイ行為の罪で重労働25 年の判決。スターリン死去後の特赦で53年帰国。55年詩誌「ロシナンテ」を創刊。


第2回 講演
いま、W・B・イェイツを読む
講師 栩木伸明(アイルランド文学者)
2021年3月13日(土) 15時より

万物がばらけて中心が折れる。

まったき無秩序が世に放たれ、

血に染まった濁り潮が押し寄せて、

罪なきひとびとの式典がいたるところで水に呑まれている。

最良の者たちは確信を喪失し、最悪な連中が

熱情に駆られて、せっせと仕事を進めている。

──W・B・イェイツ「再臨」より

この詩が書かれたのは約100年前の1919年。背景には第一次世界大戦後のヨーロッパの混乱がありました。しかし私たちが、いま、この詩を読むとき、現在の私たちの姿、世界の状況を言い当てられているという思いにとらわれずにはいられません。イェイツは、このような直観力をどのようにして得たのでしょうか。詩の普遍性は、どこから生まれるのでしょうか。

昨年スタートした「シアターカイ・詩のカイ」、第2回は、アイルランド文学者の栩木伸明さんをお迎えします。

イェイツの詩を朗読していただきながら、その詩のことばにひそむ人間の精神の姿を見つめる時間をもちたいと思います。

講師プロフィール

栩木伸明(とちぎ・のぶあき)
早稲田大学文学学術院教授。専門はアイルランド文学・アイルランド文化。イェイツの物語や小説、詩群を収めた『赤毛のハンラハンと葦間の風』『ジョン・シャーマンとサーカスの動物たち』の編訳を手がけ、イェイツのエッセンスを日本の読者に紹介する。また、2021年に栩木訳によるイェイツ全詩集の刊行が予定されている。
おもな著書に『アイルランドモノ語り』(読売文学賞)、『声色つかいの詩人たち』など、また、ウィリアム・トレヴァー『ラスト・ストーリーズ』、コルム・トビーン『ノーラ・ウェブスター』、J・M・シング『アラン島』、ブルース・チャトウィン『黒ヶ丘の上で』など翻訳書も多数

W・B・イェイツについて

William Butler Yeats 1865-1939
アイルランドの詩人・劇作家。ダブリンに生まれ、世紀末の詩人としてロンドンで名を挙げた後、アイルランド文芸復興の中心人物として文化ナショナリズムを唱導した。詩集に『オシーンの放浪その他の詩』(1889年)、『葦間の風』(1899年)、『クール湖の野生の白鳥』(1919年)、『塔』(1928年)、『螺旋階段』(1933年)など、また散文集に『神秘の薔薇』(1897年)、さらに能楽の影響を受けて『鷹の井戸』(1917年)、『骨の夢』(1919年)などの詩劇を書いた。1923年、ノーベル文学賞受賞。


第4回 講演
ヴィソツキーとオクジャワ ロシア「抵抗する歌声」の文化
講師 日向寺康雄(中央大学・早稲田大学講師)
2021年9月6日(月) 19時より

ヴラジミール・ヴィソツキー(1938-1980)はロシア・タガンカ劇場の俳優。「ギターを抱えたハムレット」の演技で人気を博し、その後、作家でシンガーソングライターであるブラート・オクジャワ(1924-1997)の勧めでソ連市民の心を弾き語り、ソ連中の人々の支持を得ました。彼らの圧倒的人気の理由、その歌と詩にこめられたものについて、モスクワ放送のアナウンサーとして在ロシア30年の日向寺氏のお話を貴重な映像を見ながらうかがいます。

映像プログラム

オープニング音楽「風の翼にのって飛んで行け」

「紙の兵隊」オクジャワ

「センチメンタル・マーチ」オクジャワ

モスクワのプログレス出版所で録音されたヴィソツキーの歌

モスクワ・タガンカ劇場でハムレットを演じるヴィソツキー

「狼狩り」ヴィソツキー

ヴィソツキーの葬儀の様子

ヴィソツキーの「すべてはそんなじゃない」に合わせて踊る岩田守弘氏(元ボリショイ劇場ソリスト、現ニジニノヴゴロド・オペラバレエ劇場バレエ部長)

「山頂を目指して」ヴィソツキー(アフガニスタン戦争の映像を背景に)