シンラ第一章

野村喜和夫 著

日本現代詩の快挙!ソネット全100篇の詩集が誕生する。
ソネットとは、14行からなるヨーロッパの伝統的な定型詩のこと。
シンラとは、森羅であり、この宇宙の、天と地の、普遍と個の、自然と観念の、愛と哀しみの、ソネットが1篇、1篇、時間に漂い、ページとページの小宇宙に浮かんでいる。

 

装丁 三橋光太郎

 

■著者

野村喜和夫(のむら・きわお)
詩人。1951年埼玉県生まれ。早稲田大学文学部卒。戦後生まれ世代を代表する詩人のひとりとして現代詩の先端を走りつづける。著訳書多数。詩集に『川萎え』『反復彷徨』『特性のない陽のもとに』(歴程新鋭賞)『現代詩文庫・野村喜和夫詩集』『風の配分』(高見順賞)『ニューインスピレーション』(現代詩花椿賞)『スペクタクル』『ヌードな日』(藤村記念歴程賞)『デジャヴュ街道』『薄明のサウダージ』(現代詩人賞)『美しい人生』(大岡信賞)『パッサル、パッサル』『地面の底のわれわれの顔−わが近未来近代』、小説に『骨なしオデュッセイア』『まぜまぜ』、評論に『現代詩作マニュアル』『移動と律動と眩量と』『萩原朔太郎』(鮎川信夫賞)『哲学の骨、詩の肉』『萩原VS西脇−二十世紀日本語詩の可能性』、翻訳に『ルネ・シャール詩集 評伝を添えて』など。また、英訳選詩集『Spectacle & Pigsty』で2012 Best Translated Book Award in Poetry (USA)を受賞、『ヌードな日』英訳版が英国詩書協会推薦詩集に選ばれるなど、海外での評価も高い。

 

■本書より

そしてぼくはきみを抱いて ひと夏が締めくくられた
恵みの夜の郊外から また始まる都市の日常へと
車で帰路を急いでいたら 丘の向こうで
花火の打ち上がるのがみえた

 

もしきみが助手席にいたら 歓声をあげただろう
ぼくはハンドルをにぎっていたので 愛する大地
愛する大地 そこから届けられる火の花束を
視野の片隅に認めていただけ

 

でも十分だった 今年の花火の向こうに
去年の花火がみえ そのまた向こうに
おととしの花火がみえていた

 

のにちがいなく 空の奥で
いくつもの夏の終わりが連なって
夜の喉のようにすぼまり それが永遠

 

(第100番(そしてぼくはきみを抱いて……)より)

 

 

  • A5判変型/フランス装/本文424頁
  • 3200円(本体価格・税別)
  • 2026年7月25日刊
  • ISBN978-4-89629-476-7