『光りの島』『久高オデッセイ』三部作など、光と風を繊細にとらえる映像を通して自然の側から人間の姿を浮き彫りにし、海からの眼差しをもって文明批評の姿勢を貫いたドキュメンタリー映画監督・大重潤一郎の著作を集成。
新聞雑誌などに発表された文章、講演録、対談録はすべてを収録、さらに映画シナリオ、草稿、企画書などからも一部を収録し、独自の歴史観、自然観に裏打ちされた思考の全容にせまる。
巻末には、詳細な大重潤一郎年譜、作品リストを収める。また著者と長年にわたって親交を深めた宗教学者・鎌田東二の序文「いのちの汀」。
装画 薩琉海路図(鹿児島県立図書館所蔵)
装幀 港の人装本室
■著者
大重潤一郎(おおしげ・じゅんいちろう)
映画監督。
1946年、鹿児島市生まれ。19歳より映画製作に携わり、20歳から岩波映画製作所で演出補などを務める傍ら、1970年、鹿児島県黒神集落の開拓民を題材とする監督デビュー作『黒神』を発表。人間性を破壊していく現代社会のあり方に疑義を呈し、自然への畏敬、風土に根ざした人々の暮らし、各地の伝統的な祭祀を題材とする作品を多く手がける。沖縄の無人島・新城島で撮影した『光りの島』(1995年)と『風の島』(1996年)、『縄文』『原郷ニライカナイへ──比嘉康雄の魂』(2000年)、ネイティブアメリカン居留地をめぐる『ビッグマウンテンへの道』(2001年)などを発表後、2001年より14年以上にわたり沖縄久高島の取材と撮影を続け『久高オデッセイ』三部作を完成する。また、2003年、小川紳介・大島渚両監督の対話を記録した『小川プロ訪問記』がベルリン映画祭招待作品となる。2002年、沖縄映像文化研究所設立。2015年、那覇にて逝去。
■編者
高橋慈正(たかはし・じしょう)
曹洞宗僧侶。スピリチュアルケア師。
1980年東京生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科卒業。東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。2012年より1年間、アメリカ合衆国インディアナ大学ファインアーツコースの研究員として渡米。留学中より参禅を続け、2017年奥村正博老師より出家得度を受ける。
2002年に大重潤一郎監督と出会い、2008年より『久高オデッセイ第二部』『第三部』の演出助手を務める。また、NPO法人東京自由大学やオンラインなどで大重監督作品の上映活動を続けている。
■目次
いのちの汀 鎌田東二
Ⅰ シナリオ・シノプシス
かたつむりはどこへ行った より/かりゆしの海 より/パナリ/東京フィッシャーマン より/風の息 より/光りの島 ISLAND OF LIGHT/縄文 より/The Long Walk For BIG MOUNTAIN/ビッグマウンテンへの道 より/久高オデッセイ第三部 風章 より
Ⅱ 発言集 寄稿・企画書・対談・講演録ほか
嗚呼誰ぞ知る/『人と職を結ぶために』を観て/昭和四十四年晩秋の感懐/アピール/『黒神』あらすじ/(ミクロネシア)/「パナリ」メモ/「海民」シンポジウム企画趣旨/「海民」シンポジウム企画趣旨/企画書 天の川/映画 天の川〈原案〉/ハイビジョン番組「祇園祭」ロケを終えて/(御礼と御挨拶)/自然と向き合う魂の映画/映画『オヤケアカハチ』について/ヒトも自然の一員と知るところから─座談会 環境問題を考える/自然感じつつ自然体で…/『光りの島』では万物の母体である自然の営みに全信頼をおいた/出会うことのドキュメンタリー──対談 神馬亥佐雄vs大重潤一郎/自作品を語る/現代に息づく縄文現代に息づく縄文──映画『縄文』を語る/原田憲一様/今年遭遇したる現実・魂/縄文/(シンポジウム「自然と祖霊」より)/生命原理に価値観移せ/天上の足音が聞こえる/沖縄の心「久高島」 イザイホーの島は今……/(近況お知らせ)/日本の基層文化/ベルリン訪問前後記/『根』創刊に寄せて/ラストランナー「久高島」/久高島に伝わる海の民のワザとこころ/京の祭りと沖縄の祭りを比較して/久高島のワザとこころ/生命の源、パナリ/『久高オデッセイ第三部 風章』制作ノート(人の生は気の聚まれるなり/確認と予感/月と生命/人生の転機/海を渡るまれびとたち/いえの素形/新しい若い風/最近のこと)
大重潤一郎年譜
大重潤一郎作品リスト
参考文献
編者あとがき 悲しみの経験が生んだ大重映画のやさしさ 高橋慈正
- 四六判/並製本/本文392頁
- 3200円(本体価格・税別)
- 2025年7月刊
- ISBN978-4-89629-462-0 C0074

