1951年生まれの歌人は92年頃から歌作りに励むようになり、本歌集には2024年秋までに詠んだ429首を収める。日常の暮らしや風景から題材をとった自然詠と身辺詠が一日いちにち過ぎていった人生の明暗を照らし出すが、その先の幸いがほころび、静かに余韻が残る。ハンセン病文学に衝撃を受けた歌人は、ハンセン病療養所についての歌を詠み、社会に投げかけている。
装丁 長田年伸
■本歌集より
我が子らはそれぞれの道を歩みけり庭につけたるあんずのつぼみ
暁に貨物列車は過ぎ行きて朝餉の頃にラジオ体操聴く
駆け回る小春日和に愛犬がチューリップ咲く初島ガーデン
*
静かなる全生園は愛犬禁止家族の散歩とわに叶わず
卒寿超え入所者の未来いずこなり新生園は雪の中
■著者
喬木驟雨(たかぎ・しゅうう)
1951年生まれ。社会学者・東南アジア研究者。日本歌人クラブ会員。
令和6年版、および7年版『ふれあい文芸』短歌部門、特選。
著書『武蔵野の風に向かって』橋本社会文化の部屋・Amazon Services International、2023年
■目次
阿武隈川 一九九二〜一九九六年
ブルーライト横浜 一九九八〜二〇〇五年
沖積層 二〇二二〜二〇二四年
モンタージュ 二〇二四年
回想 世界遊学――二〇〇二年 二〇二四年
あとがき
- 四六判/並製本/本文196頁
- 2200円(本体価格・税別)
- 2025年6月刊
- ISBN978-4-89629-458-3 C0092