◎10代の詩「斜塔」ほか15篇の詩が発見されて初公表する。
◎戦争詩を批判する詩人は戦後の廃墟に立ち、「いのちの詩」をはげしく希求する。詩誌『新詩派』『詩行動』『今日』をつくり、戦後詩に多大な影響を与える。
◎90代詩篇（4篇）もおさめ、百歳の詩人・平林敏彦の生涯にわたる詩精神の命脈を明らかにする。
◎解説は三浦雅士「廃墟と錯乱――詩人復活の背後」。
◎カラー口絵に詩誌『新詩派』『詩行動』『今日』および平林敏彦著作の書影とポートレイト。
◎巻末に「平林敏彦著作目録」「詩誌『新詩派』『詩行動』『今日』書誌」をおさめる。
装丁 港の人装本室
■著者
平林敏彦（ひらばやし・としひこ）
詩人。1924年横浜市生まれ。十代から詩作をはじめ、『若草』『文芸汎論』『四季』などに投稿し、掲載される。戦後、復員後間もない1946年3月に詩誌『新詩派』を創刊、田村隆一、鮎川信夫らが寄稿した。『新詩派』終刊後『詩行動』『今日』を創刊、56年に創刊された詩誌『ユリイカ』の編集に携わるなど、多くの詩人たちと交流をもつ。1951年、第一詩集『廃墟』を上梓、54年に第二詩集『種子と破片』を刊行した。50年代後期から約30年間の沈黙を経て、88年に第三詩集『水辺の光 一九八七年冬』を出版。以後、詩集に『磔刑の夏 一九九三』（93年、第5回富田砕花賞）、『舟歌 Barcarolle』（2005年、第23回現代詩人賞）、『ツィゴイネルワイゼンの水邊』（2014年、第17回小野十三郎賞）など旺盛な詩作活動を続ける。1991年、横浜詩人会会長に就任。戦前から戦後にかけての詩人たちの動向を記録した『戦中戦後 詩的時代の証言 1935-1955』（2009年）で第12回桑原武夫学芸賞。2012年、長年の業績が認められ、第十8回横浜文学賞を受賞。2025年4月6日逝去。
■目次
十代詩篇
斜塔／甕／車座／径／城址の町／斜塔
詩 拾遺
帰郷／村／山雨／雪／夕景／兵列／熱処理工場／界隈／竹／高原詩抄／樹
散文 Ⅰ
個の発掘／架空の近代――北園克衛論ノオト／欺瞞者の文学／三好達治論／近代詩に関する二三の批判／危機の自覚――現代詩の革命について／詩人の孤独／小野十三郎論／『荒地詩集 一九五三年版』／Zへの手紙／日記／黒田三郎詩集『ひとりの女に』／大岡信小論／ぼくらが詩に求めるもの／詩人の声／詩人研究 金子光晴／戦後詩の主題／さびしい夏――志沢正躬を悼む
散文 Ⅱ
「今日」の会／生の証として自分を焙り出す詩を書こう／「荒地」のimpact／自在な夢の詩人――先達詩人としての山田今次／時代を超えて／「帰館」のことなど――追悼・谷川雁／暁天の星・田村隆一／詩が燃焼する坩堝―長谷川龍生の現在／第二次大戦戦下の若い詩人たち――わたしの詞華集／辻井喬と詩誌「今日」のこと／鮎川信夫がいなければ……――追悼・牟礼慶子／忘れ得べき詩――追悼・長島三芳／林芙美子について 一九四八年「新風」／「今日」から「鰐」へ︱大岡信の手紙にふれて
九十代詩篇
水邉にて／一点／詩／叫び
廃墟と錯乱――詩人復活の背後 三浦雅士
平林敏彦著作目録
詩誌『新詩派』『詩行動』『今日』書誌
初出一覧
- 四六判／上製本／本文376頁＋カラー口絵16頁
- 本体4000円（本体価格・税別）
- 2025年4月刊
- ISBN978-4-89629-456-9 C0095