どこかで涙が湧き出でて

鄭玄宗 著
徐載坤・林陽子 訳
青木由弥子 監修

現代韓国詩を代表する詩人・鄭玄宗(ジョン・ヒョンジョン)。一九七二年の第一詩集『事物の夢』から二〇二二年の『どこかで涙が湧き出でて』まで、激しく変転し続ける韓国社会のなかで詩を書き続け、十一冊の詩集を刊行。空、海、大地……万物との交流のなかで人生の真理を追い求め、いのちの言葉を語る。かたわら延世大学教授をながく務め、教え子に二〇二四年ノーベル文学賞を受賞したハン・ガンがいる。
本詩集は十一冊の詩集から代表的な作品を厳選し、オリジナル編集により、その広大な詩世界を初めて日本に紹介する。

 

装丁:長田年伸

 

■著者

鄭玄宗(ジョン・ヒョンジョン)
1939─。
現代韓国詩を代表する詩人。韓国芸術院会員。延世大学哲学科を卒業後、出版社と新聞社を経て、延世大学国文科教授。1965年、『現代文学』を通じて登壇し、1972年第一詩集『事物の夢』を上梓。以後、2022年『どこかで涙が湧き出でて』まで11冊の詩集を刊行。パブロ・ネルーダなどの海外文学の翻訳でも活躍。〈大山文学賞〉〈未堂文学賞〉他、2004年の〈パブロ・ネルーダメダル〉など、国内外の各文学賞を受賞。

 

■訳者

徐載坤(ス・ゼコン)
韓国外国語大学日本語通翻訳学科教授。韓国啓明大学校日文科卒業。東京大学大学院国文科卒業。文学博士。日本近現代詩が専門。韓国の現代詩を積極的に日本に紹介している。論文に「茨木のり子詩考察──戦争表象を中心に」ほか。著書に『『日本詩人』と大正詩──〈口語共同体〉の誕生──』(共著)、訳書に呉世栄著『千年の眠り』(林陽子共訳)。

林陽子(はやし・ようこ)
仁徳大学語文社会学部副教授。専門は韓日比較文学。おもな研究実績に「韓国近代文壇と日本文学」、訳書に金素月著『つつじの花』、呉世栄著『千年の眠り』(徐載坤共訳)。

 

■監修

青木由弥子(あおき・ゆみこ)
詩人、評論家。学習院大学文学部哲学科卒業、早稲田大学大学院文学研究科美術史学修了。詩集に『星を産んだ日』『しのばず』、評論に『伊東静雄―戦時下の抒情』。

 

■目次

序文  鄭玄宗

1 事物の夢
君は星なのか──詩人のために/図々しい物質/事物の夢1──木の夢
2 私は星のおじさん
なんと哀れな/苦痛の祝祭2/落ちて跳ねるボールのように/島
3 落ちて跳ねるボールのように
緑の喜び──春の森で/虫の瞳のような/月と太陽をも巡らせる愛が/感嘆符
4 愛する時間が足りない
すべての瞬間がつぼみだった/懐/自己欺瞞/太陽から飛んで降りてきました/ふるさとの小学校/この鍵で/雷を讃える歌/夜道のバス/君は誰なの/ものさし/愛する時間が足りない
5 一輪の花房
道の神秘/葦の花/素晴らしい風景/明るいのです/青天の霹靂/ひとさじの土の中に/一輪の花房/ライオンの顔の上のカタツムリ/木の皮を讃える歌
6 世の中の木々
染みこめ、影/空の火炎/雲の種/露/世の中の木々/夜空に輝く俺の血よ/その花束
7 渇きであり、湧水である
渇きであり、湧水である──Jへ/辞書を讃える歌/青い空/偽りを、さもなくば死を!/安否/飛べ、バスよ/時間と空間の息吹よ
8 光輝のささやき
花の時間1/詩がまさに押し寄せて来ようとするのだが/一日/訪問客/女/すべては心の食べかた次第/味のエネルギー/金剛の光よ――イスタンブール詩篇/光輝のささやき
9 耐えられない
依りかからず/耐えられない/文章という糸よ――物書きの心の欠片/草の葉は/白い紙の息づかい/芸術の力1――ロマン・ポランスキーの「戦場のピアニスト」より/簡単な頼み/蛍光灯で太陽を照らす
10 影に燃える
このもどかしさ/挨拶/宝石の夢1/泉を讃える歌/鳥の恩恵/旅の麻薬/恋愛/ああ、時間よ/影に燃える/何という瞬間でしょう!/あらゆる言葉は余韻――卵
11 どこかで涙が湧き出でて
時間は経つ―コラージュ/言葉たち――辞書を広げて/なんてすてきなこと/水月観音図/起こる前に消えてゆく/この有からあの柔が流れ出る――J・S・バッハの音楽/夢うつつに/どこかで涙が湧き出でて

 

解説  徐載坤
鄭玄宗年譜

 

 

  • 四六判/並製本/本文224頁
  • 2200円(本体価格・税別)
  • 2024年11月刊
  • ISBN978-4-89629-449-1 C0098