震災・コロナ 子どもの遊びと遊び空間 仙台・冒険広場の記録 子どもの文化ライブラリー よりよく生きる vol.3

加藤理・根本暁生・三浦忠士 著

仙台ではさまざまな団体が子どもの遊び場づくりに取り組んできた歴史があり、「冒険あそび場―せんだい・みやぎネットワーク」は代表的な存在。子どものための独創的な遊び空間をつくりあげる活動の中、2011年の東日本大震災、そして2020年からの新型コロナウィルスという大きな試練を創意と実践によって乗り越えようとしている。本書は、その貴重な活動記録やプレーリーダーが出会った子どもたちに注目し、本来の子どもの遊びと遊び空間の意義について考える。

震災後の緊張状態の中、またコロナ禍の中で遊ぶ仙台の子どもたちの姿が、私たちに語りかけてくることは何か――。

 

■目次

「「子ども文化のライブラリー よりよく生きる」刊行にあたって」片岡輝

プロローグ 仙台と震災の記憶

はじめに/三陸地方と地震の記憶/災害の記憶から得られること

1 東日本大震災と子ども

東日本大震災の発生と被害/子どものストレスとトラウマティック・プレー/放射線量と子どもの生活

2 震災が生んだ巡回型遊び場

仙台の冒険遊び場づくりの歩み/仙台の冒険遊び場づくりの歩み/大津波到達時の海岸公園冒険広場/海岸公園冒険広場周辺地域での遊び場活動へ…阪神淡路大震災の知見をもとに/避難所で見た子どもたち/遊び場活動に向かう体制づくり/遊び場活動開始に向けた動き/「六郷あそび場」のスタート/複数個所での、遊び場活動の展開へ/震災発生から復興に向けた子どもの生活環境の変化/巡回型遊び場づくりの展開/遊びを見守る大人の輪を広げるために

3 プレーリーダーが見た子どもの遊び

自由な遊びのなかでよりよく生きられるようになる子ども/遊ぶなかで自らを癒す子ども/遊びが生み出す気持ちのゆとり/つくる遊びについて/ものをつくる遊び/身の回りのものでつくる/つくることそれ自体を楽しむ/つくることとしてのこわすこと/遊びをつくる/遊びの中で生まれるきずな/多世代間の遊びが生み出すこと/気負わないかたちで年下の子どもの遊びをささえる年上の子ども/年齢の差を越えた対等な付き合い/子どもと大人/遊びの許容度が広がる/校庭で/公園の茂みの奥で/居場所をつくる/子どもたちがよりよく生きられる空間としての雨が降る公園/雨のあとの公園でも/強風が吹く校庭で/仮設住宅が異世界に /遊び場としての田園/子どもが自ら見つけた遊び場でよりよく生きられる時間を過ごすために

4 コロナ禍の冒険広場と子どもの遊び

海岸公園冒険広場の再開/新型コロナウイルスの感染が拡大するなかで/分散して遊べる環境をつくる ―第一波を受けて/季節に応じた分散して遊べる環境づくり ―第二波・第三波のなかで/長期化するコロナ禍のなか続く試行錯誤 ―第四波到来/進化を続ける分散して遊べる環境づくり ―第五波を乗り越えるために/コロナ禍の冒険広場で子どもたちがつくり出した遊び

エピローグ 〈すき間〉という宝物

「プーと大人になった僕」と〝何もしない〟時間/〝何もしない〟を楽しむ子どもと〈すき間〉/子どもの世界とチャイルドロア/〈すき間〉という宇宙/身近にある〈すき間〉の大切さ/二つの世界を行き来する子ども

あとがき

付録資料(巡回型遊び場活動報告書)

 

■著者

加藤理(かとう・おさむ)
宮城県仙台市生まれ。文教大学教育学部教授
子どもの文化を視点にしながら、教育の諸問題や子どもが直面する課題について研究。仙台の子どもの文化史についても研究。
著書に『〈めんこ〉の文化史』(1996年、久山社、日本児童文学学会奨励賞受賞)、『駄菓子屋・読み物と子どもの近代』(2000年、青弓社)、『「児童文化」の誕生と展開―大正自由教育時代の子どもの生活と文化―』(2015年、港の人、日本児童文学学会賞受賞)、他

 

根本暁生(ねもと・あきお)
東京都生まれ。認定NPO法人冒険あそび場―せんだい・みやぎネットワーク 理事・プレーリーダー。仙台在住
学生時代、阪神淡路大震災の救援活動で冒険遊び場と出会い、大学院修了後は東京都世田谷区の活動団体でプレーリーダー、後に運営スタッフを務める。2008年、海岸公園冒険広場の運営にあたるため仙台に。東日本大震災以降は、巡回型遊び場活動の展開にも力を注ぐ。

 

三浦忠士(みうら・ただし)
宮城県仙台市生まれ。認定NPO法人冒険あそび場―せんだい・みやぎネットワーク プレーリーダー。仙台在住
学生時代、子どもの造形的な遊びに関心をもち、博士論文のテーマとする。2010年より現団体に所属し、海岸公園冒険広場で勤務。東日本大震災以降は巡回型遊び場活動にも力を注ぐほか、仙台市子育てふれあいプラザ若林「のびすく若林」で乳幼児親子のための外遊びの環境づくりにも取り組んでいる。

 

 

  • 四六判/並製/カバー装/本文188頁
  • 2000円(本体価格・税別)
  • 2022年3月刊
  • ISBN978-4-89629-405-7 C3337