月金帳 2020 April-September 第1集

石田千・牧野伊三夫 著

月金帳(げっきんちょう)は、週の始まり「月」曜日と、週の終わり「金」曜日のたそがれに、交互にしたためられた小さな通信。
コロナの最初の嵐が吹き荒れ、人々が不安のなかに閉じこもっていた頃、作家と画家の手紙のやりとりが始まった。
家の中と近所の散歩だけの日々を報告しあうふたりの話題は尽きない。
おいしいものが嬉しい。草花が美しい。日常こそがとうとい。
孤独の味わいも友情の滋味もよく知るふたりがつづる言葉の向こうには、あたたかな希望がほんのり灯っている。

 

2021年4月よりWebで連載の往復書簡を書籍化。

 

装画・絵 牧野伊三夫

 

■本書より

月金帳は、隔週で書く。原稿用紙をめくるのはたそがれどき。西日や、谷にむかっていく雨をながめて、えんぴつを持つ。
ここも、放課後とおなじように、だれもいない。こころぼそいけど、らっぱを吹くためだけに学校に通ったあのころより、ずっといい。ひとりで書いているけど、ならべる文字は、このベランダから、牧野さん、上野さん、読者のみなさんのところへ飛んでいく。
石田千「あとがき」より

 

あらためてゲラになったものを読んでみると、僕の方が文字量がずいぶん多い。文章が本業の人を相手に、なんともずうずうしいものである。細身の千さんと太った僕の体格の違いのようでもある(略)
カバーの絵は、どこかへ吹いていく風のように颯爽としていながらも、複雑で繊細な心をもった千さんを想い浮かべて描いた。
牧野伊三夫「あとがき」より

 

この本は約半年間の手紙を収めているが、連載は今も続いている。世の中にも僕たちにお、さまざまな変化があったし、これからもあるだろう。ふたりのやりとりを見守り、応援し続けていきたい。読者のみなさんも一緒に歩いていただければ幸いである。
上野勇治「友情が紡いだ本」より

 

■著者

石田千(いしだ・せん)
1968年福島県生まれ、東京育ち。作家。2001年、「大踏切書店のこと」により第1回古本小説大賞受賞。16年、『家へ』(講談社)にて第3回鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞。民謡好きで、『唄めぐり』(新潮社)を著するなど記録にまとめている。牧野伊三夫が装画を担当した著書に『窓辺のこと』(港の人)、『バスを待って』(小学館)、『箸もてば』(新講社)。著書に『夜明けのラジオ』(講談社)、『からだとはなす、ことばとおどる』(白水社)など。

 

牧野伊三夫(まきの・いさお)
1964年北九州市生まれ。画家。多摩美術大学卒業後、広告制作会社サン・アド入社。92年退社後、画家としての活動を始め、月光荘画材店、HBギャラリ―などで作品を発表する。99年、美術同人誌「四月と十月」を創刊。著書に『僕は、太陽をのむ』『仕事場訪問』(以上、港の人「四月と十月文庫」)、『牧野伊三夫イラストレーションの仕事と体験記 1987–2019 椰子の木とウィスキー、郷愁』(誠文堂新光社)、『アトリエ雑記』(本の雑誌社)、絵本『十円玉の話』(あかね書房)など。「雲のうえ」(北九州市情報誌)編集委員。

 

 

  • 四六判変型/並製本/本文200頁
  • 1600円(本体価格・税別)
  • 2021年11月刊
  • ISBN978-4-89629-402-6