春の花火師

マツザワシュンジ 著

29歳で大阪にやって来て、おおよそ10年が過ぎた。この間に詠んだ歌270首をおさめた、歌人のはじめての歌集。さわやかで、あたたかで、さびしげなこの歌集は、私たちの心をゆっくりと潤してくれる。

カバー装画は平岡瞳氏「小雨」

 

■本歌集より

積まれたる火薬の箱にうっとりと頬杖をつき春の花火師

やわらかな雨の染みいる土のなか温まりゆく蛇の化石も

名も知らぬ木に寄り知らぬ鳥が鳴く夏の林の声みな光

段ボールつぶしつづけて見えてきた窓に月、大阪の、はじめての

沖に降る雪 このままでいるようにこれまでこのようにいたように

 

■著者

マツザワシュンジ

1980年、群馬県高崎市生まれ。歌誌「pool」に所属。

著書に『「よむ」ことの近代』『プロレタリア短歌』など。

 

■目次

Ⅰ 春の花火師

きざし/はるがすみ/残り風/花疲れ/飛ぶ火 跳ぶ犬/鳥も水のなか/ドラッグストア/帰り道/光1/夏を許せる/光2/大風の夜は/光3/夢の端の/ 駅頭で/月夜のターン/速度!速度!/やさしい空腹/落葉を踏む/右手袋伯の失踪/バス、夜の角を曲がる/それなりに愉快な福引きの歌/星を隠そうとして/年ノ夜/ふらふらのこころで/明るいもの、ひとつくらいは/春に隣るも/花々の現時点/光4

Ⅱ 西向南向

海と古墳のある街で/風はいくつの船の帆を/図書館に眠る、/キャンパスで会う/粉河の春の光について

Ⅲ 星のくずかごのなかから

CASTLE IN THE CLOUDS /重大会議/海、のすたるじっく/夏の日のメモ/チョコレートの歌/晩春の橋・暗闇の橋・月下の橋/あるいは夢の話/冬の日のメモ/

集の終わりに

 

 

  • 四六判/上製本/カバー装/本文184頁
  • 2,000円(本体価格・税別)
  • 2021年5月刊
  • ISBN978-4-89629-391-3  C0092