春待唄

市川洋子 著

グラスアート作家である詩人は、光あふれる自然との出会い、喜びをやさしくリズム感のある言葉によって発見する。

だれもが心の奥底に潜ませている童心へ、いま一度かえり着けるように新鮮な四季の景色を丁寧に描き、励まし、祈る。

2015年から同人誌『森ノ道』などに発表した詩作品をまとめた第一詩集『春待唄』は、世界といのちの繋がりをうたう讃歌詩集。

美術評論家、武田昭彦氏の解説「すきとおる光の風景」を掲載。

 

■著者

市川洋子(いちかわ・ようこ)

グラスアート作家。

早稲田大学文学部卒。

武田昭彦氏が主宰する同人誌『森ノ道』に詩作品を発表する。

 

■収録作品より

「木洩れ日を」

 

あたたかな

木洩れ日を

ポッケに入れて

だいじに

もって帰ろう

風向きの変わった

あの日から

季節は足早に

冬へと向かっている

たとえ

どんなに北風がつめたかろうと

君は

このあたたかな木洩れ日を

握りしめて

頰を紅くして

ふみだすのだ

あたたかな

木洩れ日を

手のひらにのせて

だいじに

もって行こう

ひとり

北風に凍えて

街角で誰かを待つ

あの小さな手のひらに

そっと渡すのだ

 

■目次

はじまりのとき/月夜/そのこえ/貝殻

 

雨/眠り/春待唄

 

森の奥にて/雨の匂いに/彷徨う/嵐/砂の丘を

 

春の日/ホタル/触れずいる/竹林/どんぐり

 

まよいみち/夏の夜

 

水たまり/波紋/前触れ

 

 

野にいでて/雨の夜/秋をゆく/木洩れ日を/雪あかり/歩む

 

すきとおる光の風景 武田昭彦

あとがき

 

 

  • A5判変型/上製本/本文138頁
  • 1,800円(本体価格・税別)
  • 2020年6月27日刊
  • ISBN978-4-89629-377-7 C0092