造形作家、菱刈俊作のコラージュ作品集。
印刷物から切り取った人や物など様々なイメージを、それまでとは異なった空間に置いてみる。するとそこには今までとは違った見知らぬ風景が現れてくるだろう。例えば、動物の顔を切り抜いてあなたの顔の上に貼るだけでいい。コラージュとはそんな光景を見るための最適な技法なのである。そこに添えた文章は本来必要のないものであるのかもしれない。けれども、その文は偏光プリズムのように、わずかに絵の見方を歪め、我々をそこからまた別の通路に導いていってくれるのではないだろうか。いずれにせよ、これは現実世界の不可解さ、それを知るための一つの方法であると思われる。
■本書より
7
ここで禁忌と見なされる行為の一つは、人前で眠り、そこから目覚めることです。耳元で誰かが囁いたその一言が意識を覚醒へと導く。しかし寝たふりを続ける以外に、いったい今何ができるというのだろう。
21
新参のドブネズミどもに食わせるぐらいなら……。男はあとの言葉をにごしたが、食糧難のこのご時世にそう思い始める者が増えるのも無理なかった。加工品にしてみんなが知らないふりをしていた時代がなつかしかった。
- 四六判変型/上製本/本文172頁
- 2,000円(本体価格・税別)
- 2018年10月刊
- ISBN978-4-89629-353-1 C0071