今年80歳を迎える詩人が、今日まで歩んできた人生を振り返り、遠い戦時下の記憶や日々の暮らしの情景、小さな生き物の営み、そして生きることの問いを彫りの深い言葉で色濃く描く。生命の大河の流れの中で、つかの間の時間を共に生きるわたしたちのいのちを愛おしむ、切実な声が響いてくる詩集。
カバー装画は画家・熊谷守一の「雨乞いだな」。岐阜の雄大な景色を描いた作品が、同郷の詩人の世界を映しとっている。
■本詩集より
「樹木」
わたしの足は
地に喰い入っている
わたしを養っているものを
足裏が感触している
わたしをこみ上げてくる
養液の
見えない軌跡が
見える形姿となって
地に佇っている
そして
どうしたら歩き出せるのか
三億年前から ずっと
考えつづけている
葉先を揺らして
■著者紹介
山田達雄(やまだ・たつお)
1938年岐阜県羽島市生まれ、現在は瑞穂市に在住。詩人。これまでに詩集『時間には翼がある』(1968年)『ぶどうの復讐』(1972年)『水腐場』(1983年)を上梓する。中日詩人会、岐阜県詩人会に所属。本詩集は4冊目。
■目次
I
水の精/樹木/ヤモリ/生の斧/弁当/淡墨桜/墓参/空の行方/洪水のあと/供物/里山
II
裏木曽街道/顔/崖縁/反照/帰還/果実/名付ける/鬼/帆のように/庭/抜く/夢のなかの家/橋を渡る
あとがき
- A5判/上製本/カバー装/本文96頁
- 1,800円(本体価格・税別)
- 2018年6月刊
- ISBN978-4-89629-348-7 C0092