日々の暮らしに、じぶんの音を見つける喜び。
いま、この世界に生きていることの、生かされていることの新鮮な驚き。
その素朴ななにげない神秘が澄明な言葉で描き出される。
関西在住の川柳作家の初めての句集。
■栞文より
なかはられいこ(川柳作家)
名付けられる一歩手前の、小さな揺れやかすかな音を見逃したくない、捕まえたいという願いのとおとさが書かせた作品群……。
正岡豊(歌人)
「いま」でなければ決して書かれえないような言葉が、ページページにちりばめられている、というのはいっていいように思う。そういった意味では一冊の本はいつも、リアルな実体でありかつ、過剰であったりなかったりする、夢のひとつでもあることだろう。
小津夜景(俳人)
日常の成分の、ほんのちょっとしたズレによって、この世のものではない時空とふいにコンタクトしてしまう。八上桐子『hibi』にはそんな風景があふれている。
■収録作品より
呼べばしばらく水に浮かんでいる名前
はじめての町をいちじく揺らすバス
こうすれば銀の楽器になる蛇口
掬おうとするとやぶれるてのひら
えんぴつを離す 舟がきましたね
■著者紹介
八上桐子(やがみ・きりこ)
1961年生まれ。2004年「時実新子の川柳大学」入会。2007年終刊まで会員。以後、無所属。本句集は初めての句集。
■目次
すずめのまぶた
ねじれたガラス
水に溶ける夜
ままごと
器ごとあたためる
その岬の、春の
- A5判変型/上製本/カバー装/本文106頁
- 1,800円(本体価格・税別)
- 2018年1月刊
- ISBN978-4-89629-343-2 C0092