荒木陽子全愛情集

荒木陽子 著

「私を写真家にしてくれたのはヨーコだった」とアラーキー。1990年42歳で亡くなった荒木陽子は、写真家・荒木経惟の妻であると同時に、天才写真家の創作の源泉であり続けた。またエッセイストとして活躍、飾り気のない文体で日常生活や旅行記をつづりながら、人の心の機微をとらえ、夫への愛、人生の歓びをのびやかに表現した。 荒木陽子が発表したエッセイ、小説などすべての執筆作品を集め、この類いまれな女性の感性と思考をあまねく堪能する。

◎荒木陽子が発表したエッセイ、小説など全執筆作品(単行本未収録作品を含む)を収録した、初めての著作集(全1巻)。

◎荒木経惟による荒木陽子のポートレイト15点とあとがきを収録。

◎堀江敏幸(作家・早稲田大学教授)の解説「ズブズブの現在を生きる 荒木陽子のために」を収録。

◎ブックデザインは、祖父江慎+福島よし恵(コズフィッシュ)。

◎巻末に、年譜、解題、著作目録を収録。

 

■本書より

物思いに沈んでいる表情が良い、と言ってくれた。私はその言葉にびっくりして、じっと彼を見詰めていたような気がする。

 

その時までの私の世界は、きっと、原色だったろう。けれど、その原色は渋いニュアンスのある色に変わろうとしていた。一人の男の出現によって、季節がはっきりと区切られていくのを、秘かに自分の心の中に感じていた。私、 20才、彼、27才。冬の終わり頃だった。

 

■著者紹介

荒木陽子 あらきようこ

1947年、東京生まれ。高校卒業後、電通に入社、同じ会社のカメラマン、荒木経惟と出会う。1971年結婚。新婚旅行で撮影した写真で『センチメンタルな旅』が自費出版される。1978年、出会いからの陽子のポートレイトを集めた『わが愛、陽子』に文章を執筆。文筆家としてのデビュー作となる。1982年、夫とのヨーロッパ旅行記『10年目のセンチメンタルな旅』が出版され、エッセイストとして雑誌等で活躍する。1990年、逝去。享年42。

 

■目次

第1章 『わが愛、陽子』より 1978年

第2章 10年目のセンチメンタルな旅 1982年

第3章 愛情生活 1982─1984年

第4章 花の人妻チャンネル 1983─1985年

第5章 ノスタルジアの夜 1984年

第6章 EXHIBITION 1983─1985年

第7章 あー夫婦だなあ 1984─1986年

第8章 七月の黄昏は恋のような時間 1985年─1986年

第9章 長篇旅日記 アワビステーキへの道 1985年

第10章 酔い痴れて 1987年

第11章 愛情旅行 1989年

第12章 東京日和 1989─1990年

あとがき 荒木経惟

 

解説「ズブズブの現在を生きる 荒木陽子のために」堀江敏幸

 

荒木陽子年譜

解題

著作目録

 

 

  • 四六判正寸/並製本/カバー装/口絵+本文784頁
  • 5,000円(本体価格・税別)
  • 2017年7月刊
  • ISBN978-4-89629-336-4