サルの国

薮内小鈴 著

6篇の詩と俳句、横組の詩集。

サルの国とはどこか。詩人の記憶の彼方にある星かもしれない。

詩人は、歓び、悲しみ、怒り、諦め、恐怖……、無数の断片的な記憶の組合わせによって、言葉に出会い、詩を発見する。詩は、今を生きる不安定な存在に確かなものを気づかせるための道しるべ、詩人の穏やかな声を手がかりに辿って、豊かなサルの国を旅してみる。

 

■詩人から読者のみなさんへ

11年間書きためた詩篇から6作品を選び、目下学び中の俳句とともに1冊にまとめました。横組で詩篇ごとに形式が異なり、視覚的にも楽しめるかと思います。言葉の原初的(マジカル)な可能性を解き放ちつつ、自然や物との幸福な関係を探ろうとしています。

 

■ 本書より

「船 影」

浴槽に水が注ぐ音。 路上の話し声。 屋根を伝ってくる列車の音。

船を降りると長い話の荷をほどき、ゆるやかに新しい旅が始まるはずだった。

知覚や意識のふくらみを凌ぎ、なんと多くの場所に同時に立っていたのだろう。

窓枠を満たしている雪崩に圧し潰される胸の敷石のはがれた小径に映し出す。

濃霧に閉ざされ地を掘るばかりの日々に一つまた一つ見送ったものが、

港から港、町から村と、身を寄せる戸口に落とす人影を。

(後略)

 

■著者

薮内小鈴(やぶうち・こすず)

1968年生れ。2003年より詩を書く。

2014年に句作を始め、2016年俳句結社「クンツァイト」入会、依光正樹に師事。

 

■目次

書割の森へ/空を飛ばす法/Zan/船 影/午後5時を越えて/木の間隠れ

 

猿 茸(俳句作品)

 

 

  • A5判/並製本/カバー装/本文128頁
  • 1,600円(本体価格・税別)
  • 2017年7月刊
  • ISBN978-4-89629-332-6