告別

岡田隆 著

山口県防府市在の詩人の第3詩集。男と女の幾多のさみしい情景を描きながらも、その先の曠野をにらみ、詩を渇望する。詩人はひとり町をさまよい歩いても、かつて見失った女をさがしあてぬ。またおのれに別れ、おのれに出会う。すさまじく荒い風が吹きおこり、詩がこぼれてくる。

 

■収録作品より

「これをしも」

 

心の飢えの

静かに湛えられてあることの

真ッ直ぐな狂人の

瞳であることの

 

産まれ落ちた嬰児の

やがて見開かれた瞳の

注ぐ光の中の

無垢そのままであることの

 

輝きあふれる瞳の

歓喜と悲痛の

無垢であることの

 

深く見開かれてゆくことの

喪失の光

一体であった者の

離れてあることの

耐え難い

奈落の

 

■著者紹介

岡田隆(おかだ・たかし)

昭和32年(1957)1月31日生

ドイツ文学専攻

詩集『ないものねだり』1998年 深想洞

詩誌『シュリンプ』編集同人 2002~2014年

詩集『風招 kazaogi』2015年 港の人

 

■目次

I

千里眼/春の嵐/今は/祈り/湖底の女

 

II

女に

 

III

白拍子とその兄/オルフォイスとオイリュディケ

 

IV

女に

 

V

弓/これをしも/シャボン玉/眠れず食えず/Y13星雲

 

 

  • A5判/並製本/本文88頁
  • 1,500円(本体価格・税別)
  • 2017年1月刊
  • ISBN978-4-89629-325-8 C0092