海峡よおやすみなさい

紺野とも 著

女性ファッション誌を愛読する女子大生や若年OLたちに〈現代詩〉を捧げるという果敢な試み。

流行のブランドを着飾り、都市生活に、仕事に、恋愛に、可愛く闊歩している現代のうら若きの乙女の内実を、勢いよくあふれだす言葉をリズミカルにあやつって豊かに表現する。

新進気鋭の女性詩人が、高度情報・消費社会を生きる現代女性のいまを描ききる。

 

■ 本詩集より

「happiness」

羽田空港のショップで売られているよーじやのあぶらとりがみは表紙

の赤い限定品。そろそろ使い終わってしまうからまた迎えに行かせて

くださいまた見送りに行かせてください、さくら色のも買いたいの。

箱にマルコリーニ詰めて宛名をしたためながら来週の仕事の段取りと

通帳の残高と知らない街のことを考えていた。川の端っこに立ってい

れば会えるかもしれないのに大雪の影響で、台風の影響で、永遠にあ

したは飛び立てない。そんな日々でもいまは素敵いつよりもいまが素

敵傷つけられた心ってなんて素敵。エスティローダー塗り直し自分用

のハーシーに口づけて、かなしみならば咲き誇れ

 

■著者

紺野とも(こんの・とも)

1972年岡山県岡山市生まれ。

詩集『かわいくて』思潮社、2014年

詩集『擾乱アワー』マイナビ出版、2015年(オンデマンド)

 

 

  • 四六判/並製本/本文88頁
  • 1,800円(本体価格・税別)
  • 2016年10月刊
  • ISBN978-4-89629-322-7 C0092