◎畏友だった小説家中上健次へ捧げる挽歌。中上健次とは、文芸評論家山本健吉の紹介で知り合い、親しく交わる。没後24年のこの夏、8年という時をかけて、俳人・角川春樹が声ふとく切々とよみあげるひとつひとつの祈りの句が、天をはげしく打つ。
◎父角川源義、母照子、姉辺見じゅん、森澄雄、秋山巳之流への挽歌。波瀾の生涯を歩みつづけた俳人は、自らのうちに棲む死者をうたい、いま生かされてあることを穏やかに感ずる。
◎黒の布クロスに、銀箔で「健次はまだか 角川春樹」とだけ押されたブックデザインはストイックで美しく、闇に浮かぶ俳人の祈りをおもう。
■収録作品より
健次はまだか晩夏がジャズになつてゐる
涼しさや水を離るる水のこゑ
多喜二忌の夜の静寂に海がある
ひとはみな途上のいのち鳥ぐもり
■著者
角川春樹(かどかわ・はるき)
昭和17年富山県生まれ。國學院大學卒業。父・源義が創業した角川書店を継承し、出版界に大きなムーブメントを起こす。抒情性の恢復を提唱する俳句結社誌「河」を引き継ぎ、主宰として後進の指導、育成に力を注ぐ。平成十八年日本一行詩協会を設立し、「魂の一行詩」運動を展開。
句集に『カエサルの地』『信長の首』(芸術選奨文部大臣新人賞・俳人協会新人賞)、『流され王』(読売文学賞)、『花咲爺』(蛇笏賞)、『檻』『存在と時間』『いのちの緒』『海鼠の日』(山本健吉賞)、『JAPAN』(加藤郁乎賞)、『男たちのブルース』『白鳥忌』『夕鶴忌』など。著作に『「いのち」の思想』『詩の真実』『叛逆の十七文字』、編著に『現代俳句歳時記』『季寄せ』など多数。
俳誌「河」主宰、角川春樹事務所社長。
■目次
健次はまだか
花あれば
師走尽
さらば健次よ
西行忌
花行脚
乃木坂
獄中忌
父の詫び状
詩2編「麦秋の駅」「向日葵の駅」
エッセイ「俳句と言の葉」中上健次
あとがき
- A5判/上製本/本文176頁
- 2,800円(本体価格・税別)
- 2016年9月刊
- ISBN978-4-89629-317-3 C0092