著者6冊目の詩集。
「ことば」をめぐる多彩な活動から生み出された、 祈りと祝福の詩29篇を収録。
いのち、自然、宇宙をうたい、平和を願う詩行から光がこぼれ、心に切ない風が吹いてくる。
■収録作品より
「ミカエル通り」
予言はきっと外れない
もうじき新しい陸地が生まれて
私たちが手づかみで食べ尽くした
古い山や島は海に沈む
おさない私たちを生かしてくれた
海や空の青色が陸地の緑が
そこではすっかり塗りかえられているという
柔らかな鴇(とき)色を糧にやしなわれる心映えは
私たちがまだ知らない体を住みかにするのだろう
思えば夕焼けも朝焼けも先ぶれだった
昼と夜 夜と朝の境目は
あたらしい淡紅と親しんだふるい青で
過越しの星祭りを
空いちめんに描いてみせていたのだ
だれもがかみしめずにいられない
わかりやすさと切なさで
羽を生やした者が行く路に
思い出せた者たちがひとりまたひとりと合流する
いじらしい執着を手放して
生き残るよりも祈ることを選んで
■著者
覚和歌子(かく・わかこ)
詩人・シンガーソングライター
山梨生れ、千葉育ち。早大一文卒。大学卒業時に前衛ロックバンド「ショコラータ」の作詞でデビュー後、平原綾香、smap、夏川りみ、クミコ、ムーンライダーズ、沢田研二などに多く作品提供。1992年より開始した『朗読するための物語詩』の分野で評価を受ける。シンガーとして、2004年自唱ソロCD『青空1号』(ソニー)、2010年『カルミン』(valb)、2014年『ベジタル』(valb)をリリースし、自らのバンドを率いて国内外で演奏活動を展開中。2012年震災ドキュメンタリー「きょうを守る」(菅野結花監督)の主題歌を「ほしぞらとてのひらと」(valb)リリース。詩集『ゼロになるからだ』(徳間書店)、『海のような大人になる』(理論社)、『yes』(小学館)をはじめ、エッセイ、翻訳絵本など著作多数。2008年映画『ヤーチャイカ』(主演/尾野真千子・香川照之)で原作・脚本・監督(共同監督・脚本/谷川俊太郎)。2009年舞台「届かなかったラブレター」(ル・テアトル銀座、主演/クミコ・井上芳雄)演出・構成。2014年より米国ミドルベリー大学にて日本語学の教鞭をとる。
詩作を軸足に幅広く活動中。最新刊に「ポエタロ」(地湧社)。
■目次
はじまりはひとつのことば
はじまりはひとつのことば/夏の理由/花束/むかしはみんなが巫子だった/うつぶせの祝祭
バースデイカード
ありったけの夏/秋の質問/ふゆはたまもの/春は夢の上
カフェ・ルルド
ゴールド コード/パラフィン/バイブレーション/かりん と かたつむり
連詩拾遺
そしてことばは手渡すために
このたたかいがなかったら
このたたかいがなかったら/小さな星/希望の双子/このたたかいが終わったら/虹よ かかるな
美しいもの
美しいもの/少年迷宮/野苺/からだをもらう
ひとり連詩
浅い春の八ヶ岳にひとりで連詩してみるの巻
ミカエル通り
砂丘のお手前/またいつか/reset/ミカエル通り/瀬戸際が踊っている
- A5判/上製本/カバー装/本文128ページ
- 2,000円(本体価格・税別)
- 2016年7月刊
- ISBN978-4-89629-316-6 C0092