山東京伝 善玉/悪玉 心学早染草 本文と総索引

鈴木雅子 編著

◎黄表紙『心学早染草(しんがくはやそめぐさ)』(寛政2年)は江戸時代を代表する戯作者、山東京伝(さんとう・きょうでん 1716~1816年)によって書かれた滑稽本。当時大流行していた心学の教えを説いた教訓物として読まれていた。

◎黄表紙とは、洒落と風刺に特色をもち、絵を主として余白に文章をつづった大人向きの絵物語のこと。『心学早染草』に登場する丸の中に善、悪と書いた顔にふんどし一つの善玉、悪玉のキャラクターが好評で、善玉・悪玉の話は当時大いに流行し、現代にいたるまで用いられている。

◎本書では、稿本の影印と、詳細な注釈、校異をつけた翻刻本文、総語彙索引を収録。江戸の生活の実態を想像しやすいものとした。

◎挿絵の世界には当時の江戸の暮しぶりが読み取れ、本文では近世社会で使われていた言葉づかいを知ることができる。近世語の一端を明らかにした一冊。

 

■本書「あらすじ」より

四(二ウ)~五(三オ)

これから話す主人公の理太郎は、江戸日本橋のほとりの目前屋理兵衛(もくぜんやりへえ)という裕福で心がけもよい商人の子供で、生まれた時に例のいびつな悪魂(わるたましい)が、その身体に入りこもうとしたが、天帝がすぐにその悪魂を追い出して丸いよい魂をお入れ下さった。ただし、こういういきさつや善い魂・悪い魂の姿などが普通の人間の目には見えないことなのは、何とも言いようのないことである。

 

六(三ウ)~七(四オ)

理太郎は善い魂に守られて、利発で行儀もよく、何でも器用にこなし、よその子とは格段にすぐれた子供に成長したので、両親は掌中の玉のように大切に育て、将来を楽しみに暮らしていた。善魂(よきたましい)「どんなもんだい」と得意げな様子。

 

■著者

鈴木雅子(すずき・まさこ)

1928年 東京生まれ。東京大学文学部(旧制)卒業、同大学院国語学専攻。著書『金沢のふしぎな話 「咄随筆」の世界』『金沢のふしぎな話Ⅱ 「続咄随筆」の世界』『金沢の昔話と暮し、ならわし 「冬夜物語」の世界』『安永九年 当世阿多福仮面 本文と総索引』(港の人)。共編『宝暦二年 当世下手談義 本文と総索引』(青簡舎)。

 

■目次

まえがき 解説をかねて

第一部『善玉/悪玉 心学早染草写本』影印本文

 

第二部『善玉/悪玉 心学早染草写本』翻刻本文・あらすじ

凡例/一、翻刻本文 一/二、あらすじ/三、翻刻本文 二 注釈と校異

 

第三部『善玉/悪玉 心学早染草』総語彙索引

凡例/総語彙索引

 

主な参考資料

注釈引用文献一覧

あとがき

 

 

  • A5判/上製本/本文288ページ/函入
  • 7,400円(本体価格・税別)
  • 2016年2月刊
  • ISBN978-4-89629-311-1 C3095