初山滋奇人童画家

上笙一郎 著

◎児童文化研究家・上笙一郎が、若い頃から敬愛していた童画家・初山滋の生涯、童画論についてまとめた美装本。

◎「初山滋伝」は、初山本人を取材して得た記録をもとに、ユニークで率直な人物、生きようを描いてたいへん興味深い。

◎小川未明の『未明童話集』(第1巻、丸善、1927年刊)に収録した童画作品について、著者は初山滋の最高傑作と激賞し、初山滋の童画世界の美しさを丁寧に披露する。

◎初山滋の童画作品10点を収録。函の絵も初山作品で飾る

◎2015年1月に急逝した上笙一郎の最後の著作となった。

 

■本書より

この『未明童話集』第一巻は小川未明の代表的な童話作品をほとんど洩れなく収めており、配された童画家は初山滋。そして一童話に一枚ずつ挿し加えられているイラストレーションはというと、スマートな線描で、ときに大胆、ときに意外で、ときになつかしく、ときになにがしかエロティックであって、未明の童話作品と小さな反撥をしつつも総体としては美しいハーモニイを奏でていたのである。

わたしが小学五年生のとき旅路の病床で借り読んだのはアルス児童文庫の第十六巻『日本童話集(中)』(一九二七年)だったが、丸善版『未明童話集』第一巻には遥かに多くの未明童話作品が収められていた。そしてそれらを読んだことによって、わたしは、〈小川未明〉という童話作家の作品に心酔するようになり、同時に、その挿絵を描いた〈初山滋〉という童画家に愛着を抱くようになったのだった。……

 

■初山滋について

初山滋(はつやま・しげる)

1897年、東京・浅草生まれ。本名、初山繁蔵。日本画家・井川洗厓に弟子入り。23歳のとき児童雑誌「おとぎの世界」の表紙や口絵を描いて注目される。1927年、武井武雄らと日本童画家協会を結成し、絵本『一寸法師』を出版。35年、『初山滋童画集』出版。66年、紫綬褒章受章。67年、絵本『もず』で国際アンデルセン賞国内賞受賞。73年、逝去。

 

■著者

上笙一郎(かみ・しょういちろう)

1933年、埼玉県飯能市生まれ。本名、山崎健寿。文化学院卒。在野の研究者として、児童文化・児童文学研究に生涯を捧げた。2015年1月29日逝去。主著に、『日本童謡事典』(編著、日本童謡賞、三越左千夫少年詩賞特別賞)『日本児童文学研究史』『日本児童文学学会四十年史』等多数。妻、山崎朋子との共著に『日本の幼稚園』(毎日出版文化賞)『光ほのかなれども』(日本保育学会保育学文献賞)ほか。

 

■目次

初山滋伝――ひとり語り風に

初山滋のマドンナ――梶本喜久代=妣田圭子のこと

初山滋の童画――〈幽玄〉の近代童心的開花

初山滋の死

初山滋童画の最高峰――丸善版『未明童話集』第一巻

 

「あとがきに代えて ペンは一本、箸は四本」山崎朋子

 

 

  • A5判/上製本/本文216ページ/函入
  • 3,500円(本体価格・税別)
  • 2016年2月刊
  • ISBN978-4-89629-308-1 C0071