僕は、太陽をのむ 四月と十月文庫6

牧野伊三夫 著

◎美術同人誌『四月と十月』を主宰し、本シリーズ「四月と十月文庫」の生みの親である画家・牧野伊三夫のはじめての画文集。

◎画家・牧野伊三夫は第2回アトリエヌーボーコンペ日比野賞受賞。画業に傾注する傍ら、北九州市の情報誌『雲のうえ』、飛騨高山の魅力を伝えるフリーペーパー『飛騨』の編集にたずさわるなど幅広く精力的に活躍中である。

◎エッセイは絵画や芸術、画家の旅、日々の暮らしなどを軽妙に温もりのある筆致で描く。素朴で力づよく生命感溢れる絵画、素描作品も豊富に収録。酒と銭湯をこの上なく愛し、少年絵描きの心をもち続ける画家・牧野伊三夫の詩のある画文集。

◎跋文「あの頃のわれらは」 葛西薫(アートディレクター)

 

■本書より

「おお、小倉の街よ (ある雑誌に郷里について書いた詩)」

 

おお、小倉の街よ。

 

石飛、また工場の帰りに角打ちで一杯やっているのか。

丸くなった腹を自慢しているんだろう。

おまえは高校時代は野球部のエースだった。

丸刈りで、授業中は寝てばかりしていたな。

知っている人はいないだろう。

 

おお、小倉の街よ。

 

父さんは今日も、ぬか床をまぜているだろう。

サンショと赤唐辛子のきいた、

あの、きゅうりのぬか漬け。

母さんのなすびのみそ汁。

いつだって食べたい。

めしを腹一杯かきこみたい。

 

おお、小倉の街よ。

 

順二、教頭就任おめでとう。

いたずら坊主のおまえが、立派になったなぁ。

いたずら教頭なんて呼ばれないように気をつけろ。

『四月と十月』は今年で八年目だよ。

お互い、いくつになっても絵筆だけは手放すまいな。(以下略)

 

■著者

牧野伊三夫(まきの・いさお)

1964年北九州市生まれ。画家。1987年多摩美術大学卒業後、広告制作会社サン・アドにグラフィックデザイナーとして就職。1992年退社後、武蔵小金井のアパートの一室をアトリエにして、名曲喫茶でんえん(国分寺)、月光荘画材店(銀座)、HBギャラリー(原宿)等での個展を中心に画家としての活動を始める。1999 年、小学校時代からの画友田口順二ら6名と美術同人誌『四月と十月』を創刊。2011年、港の人との共同で「四月と十月文庫」を創刊。雑誌『暮らしの手帖』(2002 -2003)、サントリー広報誌『ウィスキーヴォイス』(1999- 2006)、『かもめ食堂』(群ようこ著/幻冬舎)、『海外個人旅行マル得マニュアル』(山下マヌー著/小学館)、『もう一杯』(大竹聡著/産業編集センター)、『調理場という戦場』(斉須政雄著/朝日出版社)他、装幀多数。著書に『今宵も酒場部』(共著/集英社)、自費出版に『ただセックスがしたいだけ』(桐野夏生著)、『柿の木九月五日』、『時計君のうた』、『湘南の商店街』。第2 回アトリエヌーボーコンペ日比野賞。2012年、2013 年東京ADC 賞。北九州市情報誌『雲のうえ』、飛騨産業広報誌『飛騨』編集委員。

 

 

  • 四六判変型/並製本/カバー装/本文152頁
  • 1,200円(本体価格・税別)
  • 2015年12月刊
  • ISBN978-4-89629-307-4 C0395