詩人は日常をはずれ、はぐれて、詩の世界に出会う。
ふるふると鮮烈な「生」の感触を発見して、生きることの不可思議さを覚える。やわらかな詩句のなかに潜む苦い空白と、あらたな物語の予感。
神奈川で活躍する詩人の待望の第5詩集『フィラメント』誕生。傑作「武蔵野」をはじめ、14編の詩作品を世に問う。
■本詩集「武蔵野」より
そうして私たちは
ゆっくりとした爆発のなかにいた。
恍惚とした瞳を集め
胸がいっぱいになるまで
雨は降り続き
病めるときも
健やかなるときも
不純だろうとなんだろうと
雨に打たれ
やがて
雨粒のひとつひとつが
時となって静止すると
光までもが静止して
あなたの憂いた瞬きが
長い物語を語り始める。
■著者紹介
小川三郎(おがわ さぶろう)
1969年神奈川県生まれ。
詩集
『永遠へと続く午後の直中』思潮社、2005年
『流砂による終身刑』思潮社、2008年
『コールドスリープ』思潮社、2010年 第四十三回横浜詩人会賞受賞
『象とY字路』思潮社、2012年
■目次
日常/レモン/日曜日/酷暑/黄金色の海/冬ごもり/コップ/武蔵野/音/未明のひと/晴れの日/松ぼっくり/帰れないふたり/回想
- A5判変型/並製本/本文64頁
- 1,600円(本体価格・税別)
- 2015年9月刊
- ISBN978-4-89629-303-6 C0092