谷川俊太郎を想像する IMAGINING TANIKAWA

ウィリアム I. エリオット 著
西原克政 訳
キャロル・カリスタ 絵

半世紀にわたって谷川俊太郎さんの詩を英訳し世界に紹介している著者が、長年の友情に感謝し、谷川俊太郎さんへ贈る詩集。日本語と英語のバイリンガル版。

 

■本詩集より

「ある日のこと」

全部の空がひとつの灰色の雲となって

俊太郎がベッドで半身を起こしている、

頭の中の絵具にひたしたマティスの絵筆のように、

長い鉛筆をあたまの中で動かしてみる。

 

まず手始めに空全体を真っ黒に塗りかえる。

しかしただの真っ暗闇には満足がいかず、

オレンジの月を適所に配置し

レモンの星を鈴なりに吊り下げる。

 

ところがすぐさま月も星も塗りつぶす(ゴッホ

の物まねと非難されてもこまるから)。

そのかわり真っ白な流星を地平線へと

斜めに一気に走らせる。

 

ここまでは天候を描く最初の手探りの段階。

それでも満足がいかず、俊太郎は空を元の

灰色にもどす。詩とは厳密さから程遠いものだ。

長々と苦悶する空は書き換え可能な一枚の羊皮紙。

 

■著者

ウィリアム I. エリオット(William I. Elliott)

1968年からおよそ50年にわたって、川村和夫とともに谷川俊太郎の詩を英訳してきた。この三人が本書の長篇詩に登場する。暇なおり、エリオットは詩を書き、川村はシェリーとダンテを読む。本書は二人からの友情を込めた谷川俊太郎への贈り物である。

 

■訳者

西原克政(にしはら・かつまさ)

横浜の関東学院大学でのエリオットと川村の同僚。本書のエリオットの詩や20世紀アメリカ詩人、パウンド、スティーヴンズ、スノッドグラスなどの詩を訳したり、ライト・ヴァースやユーモアについての論を書く。エリオットと蔵原伸二郎や工藤直子などの作品も翻訳している。

 

■絵

キャロル・カリスタ(Carol Kallista)

夫と子供二人とニューヨークに在住。パーソンズ・スクール・オブ・デザイン卒業後、長年ファッション業界のデザイナーとして活躍する。現在アン・クラインのニットウェア・デザインのチーフ・デザイナー。父の詩集『天使の一行』に続いて今回の詩集もイラストを担当している。

 

■目次

TANIKAWA TINKERING

ひねもすひねる谷川俊太郎

TRANSLATED TANIKAWA TITLES

谷川俊太郎英訳詩集題名

LINKED LYRICS

連詩

10 WAYS OF REGARDING SHUNTARO

谷川俊太郎を見る10の方法

SHUN, KAZUO AND BILL AFTER DEATH

俊太郎・和夫・ビルと死後の世界 Chapter One 第一章/Chapter Two 第二章/Chapter Three 第三章/Chapter Four 第四章/Chapter Five 第五章

SHUN AND SHADOW

谷川俊太郎と影

A DAY

ある日のこと

 

 

  • A5判変型/並製本/本文60頁
  • 1,200円(本体価格・税別)
  • 2015年7月刊
  • ISBN978-4-89629-302-9 C0092