世界 ポエマ・ナイヴネ

チェスワフ・ミウォシュ 著
つかだみちこ 訳
石原耒 訳

◎1980年ノーベル文学賞を受賞した、ポーランドの詩人・作家チェスワフ・ミウォシュ(1911−2004)は、小説『囚われの魂』『権力の奪取』『イッサの谷間』、詩集『救出』、評論『ポーランド文学史』などで知られる。

◎第二次世界大戦中の1943年、ナチス占領下のワルシャワで、チェスワフ・ミウォシュはこの詩集『世界 ポエマ・ナイヴネ』を地下出版する。戦後70年を経て、今回初めての翻訳出版となる。

◎本詩集は20編の詩作品が収められるが、過酷な戦時下で、世界は如何にあるべきかを激しく問うたチェスワフ・ミウォシュは、「純朴な詩篇」と副題をつけたこの詩集で普遍的な世界を描いた。子どもを中心にすえて写しとられたこの美しい世界は、郷愁であると同時に人類の叡智の結実であり、今なお争いが絶えない21世紀の現代においてますます大事な詩集になるだろう。

◎読書案内として、ポーランド史学者小山哲による簡潔な解説、訳者つかだみちこ、石原耒の訳者あとがき、チェスワフ・ミウォシュの略年譜を収めた。

◎ブックデザインは有山達也。素朴で美しく力強い詩集に仕上げた。

◎日本では、チェスワフ・ミウォシュの作品は『囚われの魂』(工藤幸雄訳、共同通信社、1996年)、『ポーランド文学史』(関口時正他訳、未知谷、2006年)、『チェスワフ・ミウォシュ詩集』(関口時正・沼野充義編、成文社、2011年)などが翻訳されている。なお『チェスワフ・ミウォシュ詩集』には、本詩集『世界』の作品は収録されていない。

 

■本詩集より

「希望」

希望は この大地が夢などではなく血のかよった体なのだと

見ること 聞くこと 触れること

それらが決してまやかしではないと 信じること

ここで知り得たすべてのことは

入り口に立って眺める庭園のようなもの

(略)

わたしたちの目にするものは幻にすぎないという人たちがいる

なにもありはしない ただそのように見えるだけだと

でもそれはまさに希望をもつことのできない人々

背をむけたとたん後ろにある世界は

すっかり消えてなくなってしまうものと考えているのだ

盗人の手がのびてさらっていってしまったかのように

 

■著者

チェスワフ・ミウォシュ

詩人・作家。1911−2004。リトアニア出身。ヴィルノ大学時代の1933年に第1詩集『凝結した時の詩』を出版。1939年のナチスのポーランド侵攻後は、ラジオ局勤務などを経て、社会主義地下組織「ヴォルノシチ」に参加、43年本詩集『世界』を地下出版する。

戦後の45年、詩集『救出』を出版し、ポーランド文化芸術省賞受賞。米国のポーランド領事館、同大使館、フランスのポーランド大使館に勤務。

51年、フランスに政治亡命を申請し、パリ郊外に隠れ住む。小説『囚われの魂』を発表、英・仏・独語訳も刊行され世界的に注目される。以後、小説『権力の奪取』『イッサの谷間』、詩『詩的論考』などを刊行。

60年、カリフォルニア大学から招聘されて渡米。78年まで、同大バークレー校にてポーランド文学やロシア文学を教える。

80年、長年の業績が認められ、ノーベル文学賞受賞。81年、30年ぶりにポーランドに一時帰国し、歓迎を受ける。ルブリン・カトリック大学より名誉博士号授与。

92年、リトアニア共和国名誉市民権が授与され、52年ぶりにリトアニア訪問。93年、クラクフ名誉市民となり、以後、夏をクラクフで、冬をカリフォルニアで過ごしながら、詩集などを出版する。2004年8月14日、クラクフで死去。

 

■翻訳者

つかだみちこ

翻訳家。訳書にキェヴィチ『ノアンの夏』(未知谷)、ムロジェック戯曲「セレナーデ」(『テアトロ』誌)他、著書に『キュリー夫人の末裔』(筑摩書房)、『ポーランドを歩く』(YOU出版社)、『ヴィルニュスまで』(諏訪部夏木名義、東方社)など。

 

石原耒(いしはら・るい)

1976年生まれ。ダンサー、振付家。2009年よりポーランド在住。2011年、チェスワフ・ミウォシュ生誕百年の記念事業をきっかけに本詩集と出合い、以来関連する企画を手がけている。

 

■解説者

小山哲(こやま・さとし)

1961年生まれ。京都大学大学院文学研究科教授。専門は西洋史、とくにポーランド史。著書に『大学で学ぶ西洋史[近現代]』(共編著、ミネルヴァ書房)、『ワルシャワ連盟協約(一五七三年)』(東洋書店)、訳書に『チェスワフ・ミウォシュ詩集』(成文社)など。

 

■目次

道/木戸/ガネク/食堂/階段/絵/書斎の父/父の呪文/窓からの眺め/父は語る/ケシの寓話/芍薬畑にて/信仰/希望/愛/森への探険/鳥たちの王国/恐れ/恢復/太陽

 

解説

「荒地のなかの芍薬の園―チェスワフ・ミウォシュ『世界 ポエマ・ナイヴネ』の背景」小山 哲

 

訳者あとがき

「人間の条件―戦火のなかで紡いだメルヘンの詩」つかだみちこ

「世界と添いとげる」石原耒

 

チェスワフ・ミウォシュ略年譜

 

 

  • B5判変型/並製本/カバー装/本文64頁
  • 1,800円(本体価格・税別)
  • 2015年9月刊
  • ISBN978-4-89629-301-2 C0098