海の器

山口雪香 著

裕福だが愛に乏しい家庭に育った、モデルの姉と、シェフ見習いの弟、歳の離れたピアニストと暮らすダンサーの少女。この3人の主人公たちが、愛を求め、人生の意味を求めながら生きる姿を描く。湘南を舞台にした官能美あふれる小説。

物語を彩るのは、音楽、絵画、建築、ファッション、料理など、さまざまな美しいもの。また、舞台となる湘南の海や太陽の光、風のそよぎまでもが、繊細な輝きを放つかのように描写される。著者の徹底した美意識に染め上げられながら、女性同士の性愛や、姉と弟の性愛も赤裸々に描かれる。頽廃やエロティシズムも、人間の気高い精神の一部だと、教えてくれるかのようだ。

師である山口椿の影響を色濃く受けながらも、この著者にしか書けない、透明で美しい世界がここにある。古今東西の芸術に通じ、それらを内部で熟成させてきた才能豊かな著者、山口雪香は、この小説を20年間にわたって大切に書き継ぎ、あたためてきたという。

 

■本書あとがきより

「ものがたりのつづき」

『海の器』を最初に書いたとき、冴や朱鷺、樹はわたしの友人でした。それから二十年が過ぎ、物語の中の彼らはわたしの子供のような年齢になっています。海風と空の青、樹々のそよぎ、渚のしぶきから、無垢な彼らは妖精のようにわたしの中に現われてくれました。

あなたの心が、彼らのものがたりをいっしょに生きてくれたらうれしいです。

 

■著者

山口雪香(やまぐち・ゆきか)

1965年、山梨県生まれ。女優・歌人(『未来』『玲瓏』)。鎌倉市在住。

人間のエロスとタナトスを追究する著作を多くもつ山口椿の弟子を長年つとめる。一人芝居を定期的に上演し、朗読やチェロ演奏、絵画などをこなす、多彩な才能の持ち主。

著書に第1歌集『白鳥姫』

 

■目次

i 海の器

ii NOCTURNES

iii INTERMEZZO

iv WALDESRUHE

v 冬のフーガ

vi 雨

vii LIED OHNE WORTE

viii ETUDE

ix CLAIRE DE LUNE

x LANDLER

xi SOSTENUTE

xii APRES UN REVE

ものがたりのつづき

 

 

  • 四六判/上製本/カバー装/本文358ページ
  • 1,600円(本体価格・税別)
  • 2015年4月刊
  • ISBN978-4-89629-295-4 C0093