わが煉獄

四方田犬彦 著

古今東西の映画・文学・芸術に深く通じ、多彩にして旺盛な著作活動を展開している評論家・詩人四方田犬彦の最新詩集『わが煉獄』、33篇の詩。

わがうちなる風土、いまここにあることが煉獄であると詩人は覚悟する。苦渋の詩人はパレスチナを経てカルタゴをめぐり、コソヴォを歩く。元日本赤軍兵士に語りかけ、ある女性詩人の死を悼む。わたしたちはどこへゆこうとしているのか。詩集をめくれば悠久の時から風がわき起こってくる。詩の使徒四方田犬彦の傑作を世に問う。

 

■「後記」より

33篇をもって詩集を編むことにした。ダンテの生きた時代から、33とは優れて煉獄の数字であったためである。

煉獄il Purgatorio はキリスト教世界に生来的な観念ではない。12世紀に浄罪の場所として考案され、シチリアにあるともアイルランドにあるとも信じられた。わたしがこの虚構に導かれたのは、そこがもっぱら複数の声の交錯と反響の空間であるという理由からである。

 

■著者紹介

四方田犬彦(よもた・いぬひこ)

1953年、大阪生まれ。詩集に『眼の破裂』(百頭社、1993)『人生の乞食』(書肆山田、2007)、翻訳詩集にマフムード・ダルウィーシュ『壁に描く』(書肆山田、2006)、ピエル・パオロ・パゾリーニ『パゾリーニ詩集』(みすず書房、2011)。

最近の著作に、『ひと皿の記憶 食神、世界をめぐる』(ちくま文庫、2013)『ルイス・ブニュエル』(作品社、2013)『マルクスの三つの顔』(亜紀書房、2013)『アジア全方位』(晶文社、2013)『日本の漫画への感謝』(潮出版社、2013)ほか。著作は100冊を超える。

 

■目次

船/眼/甕/ニザール/牛糞/鏡/噴上げ/鉛/犬/柱廊/虎/壕/冠/星/きらら/猿/耳/自画像/認可/早鐘/分桃/森/暖炉/籠/塔/刑天/レグルス将軍、カルタゴに護送される/キャベツ/マラー殺害/舟/翼/コソヴォ、ミトロヴィツァ 2004/トラキア/

出典註

後記

 

■書評

「読売新聞」2014年3月18日


「神戸新聞」2014年3月30日/連載・鈴木創士「もぐら草子」


「公明新聞」2014年4月7日


「毎日新聞」2014年4月22日


「信濃毎日」2014年5月11日

 

 

  • A5判変型/上製本/カバー装/本文150頁
  • 2,200円(本体価格・税別)
  • 2014年2月刊
  • ISBN978-4-89629-273-2 C0092