北村季吟『伊勢紀行』と黎明期の松坂文化 貞享四年松坂滞在日記を読む

吉田悦之 監修
井上正和 著

◎江戸前期、歌人・俳人・国学者として活躍した北村季吟は、代表作『源氏物語湖月抄』ほか優れた古典の注釈書を著し、晩年は幕府歌学方をつとめた。また俳人松尾芭蕉を輩出するなど、国文学史上におおきな業績を残した。貞享4年(1687)、季吟が64歳のとき、伊勢神宮参拝に出掛けて松坂に1カ月余り滞在した。その滞在日記『伊勢紀行』は、当時の松坂の様子を活き活きと描いて興味深い。

◎江戸期の松坂の町を記した最古の記録といわれる『伊勢紀行』を丁寧に翻刻して、大意、注解を施してわかりやすく解説した。さらに『伊勢紀行』を手がかりにして当時の松坂の人びと、社会、文化などを丹念に掘り起こした。後年、国学者本居宣長が活躍し、松坂文化はいっそう盛んになるが、その前史ともいえる、黎明期の松坂文化に鍬を入れた画期的な労作がついに成る。

 

■監修者

吉田悦之(よしだ・よしゆき)

本居宣長記念館館長

 

■著者

井上正和(いのうえ・まさかず)

1946年松阪市生まれ。長年、小児科の医師として地域医療に活躍。その傍ら、「宣長十講」(鈴屋学会・本居宣長記念館主催)などに参加し郷土史研究に傾注する。本書は初めての著書。

 

■北村季吟について

北村季吟(きたむら・きぎん)

寛永元年(1624)〜宝永2年(1705)

江戸前期の歌人・俳人・国学者。近江国野洲郡(現滋賀県野洲市)の医者の家に生まれる。16歳のとき京に出て、安原貞室に師事して俳諧を学ぶ。のち松永貞徳の門に入る。25歳のとき、俳諧撰集『山之井』を刊行。60歳のとき、新玉津島神社の社司となり、晩年は幕府歌学方をつとめる。『源氏物語湖月抄』『徒然草文段抄』『枕草子春曙抄』など数多くの古典の注釈書を著し、その業績は大きい。俳人松尾芭蕉は季吟の門下。

 

■目次

監修者序 吉田悦之

 

I 季吟『伊勢紀行』とその時代

1 松坂の町の歴史と商人たち

a. 伊勢国・松坂

b. 松坂の商人たち

◎年表─伊勢・松坂の商人のあゆみ

2 伊勢・松坂の文芸ー俳諧を中心として

◎年表─伊勢・松坂の文芸のあゆみ

3 北村季吟と松坂の人びと

a. 北村季吟

◎略年譜─北村季吟

b. 松坂の人びと

◎家系図─荒木家・村田家・小津家・角屋家

 

II 季吟『伊勢紀行』を読む

1 『季吟伊勢紀行』ー原文と注解編

第一節 京都・新玉津島神社を出立

第二節 松坂・荒木定道亭に到着

第三節 伊勢神宮の内宮と外宮参拝

第四節 「常関庵」入庵と『伊勢物語』講釈開始

第五節 端午の節句の日

第六節 岡山俊正亭訪問、清水春流面会、松本休也と囲碁

第七節 観音寺歌会出席と林照庵訪問

第八節 荒木是誰亭訪問、忠宗亭歌会指導、『伊勢物語』終講

第九節 伊勢寺より横滝山への物見遊山

第十節 小津道生亭と村田元次亭歌会、『詠歌大概』講釈開始

第十一節『源氏物語』桐壷・帚木二巻の講釈開始、『常関庵記』執筆

第十二節歌題「浦夏月」と「松為久友」を授け残す

第十三節松坂出立、新玉津島社への帰着

 

2 『季吟伊勢紀行』─補注編

◎伊勢紀行ー行程・日次記事一覧

 

III その後の北村季吟と松坂

1 帰京後の北村季吟

2 村田元次とその蔵書

3 嶺松院歌会の始まり

 

主要参考文献

著者あとがき

 

 

  • A5判/上製本/本文260頁
  • 2,800円(本体価格・税別)
  • 2013年11月刊
  • ISBN978-4-89629-267-1 C0095