ボール表紙本と明治の日本語

今野真二 著

ボール表紙本とは何か? 和装本から洋装本にきりかわっていく時期の過渡的な本のかたちで、内容は実録小説、人情小説、伝記、翻訳本、「刑法」といった法令書まで多彩なジャンルにわたっている。そのボール表紙本の日本語のありかた(音声・音韻、語彙、表記など)はきわめて多様的である。ボール表紙本をとおして見えてくる明治の日本語。巻末に詳細な「ボール表紙本書誌データ」を収録。

 

■本書より

『坊っちゃん』が明治三十九年に発表されていることからすれば、漱石の作品をかたちづくる言語は(そのままとらえれば)明治の後半の日本語ということになり、それに先立つ明治二十年頃の日本語のありかたを窺う資料群として、ボール表紙本のもつ価値は高いと考える。

 

■著者

今野真二(こんの・しんじ)

1958年、神奈川県鎌倉市生まれ。高知大学助教授を経て、清泉女子大学文学部教授。日本語学専攻。早稲田大学大学院博士課程後期退学。著書に『文献日本語学』『漢語辞書論攷』(共に港の人)、『仮名表記論攷』(清文堂出版・第30回金田一京助博士記念賞受賞)、『文献から読み解く日本語の歴史【鳥瞰虫瞰】』『消された漱石 明治の日本語の探し方』(以上、笠間書院)、『振仮名の歴史』(集英社新書)、『大山祇神社連歌の国語学的研究』『書かれたことば』『二つのテキスト(上・下)』(以上、清文堂出版)などがある。

 

■目次

序章 ボール表紙本によって明治期の日本語を観察する

第一節 ボール表紙本とは何か/第二節 ボール表紙本による日本語の観察/第三節 非内省・非コーパス的言語学/第四節 ボール表紙本をかたちづくる日本語

第一章 音声・音韻的事象

第一節 音声言語と文字言語と/第二節 文献の表記傾向/第三節 表音的表記と非標準語形

spacer

第二章 文法的事象

第一節 文法上許容すべき事項/第二節 動詞の活用型/第三節 格助詞の使用/第四節 明治期のコソ

第三章 語彙的事象

第一節 和語と漢語と/第二節 振仮名が漢語である場合/第三節 一字漢語

第四章 表記的事象

第一節 かなづかい/第二節 漢字表記された音象徴語/第三節 日本的漢字使用/第四節 仮名文字遣い

終章 ボール表紙本の資料性

 

ボール表紙本書誌データ

 

 

  • 四六判/ソフトカバー/本文280頁/カラー口絵4頁
  • 3,000円(本体価格・税別)
  • 2012年10月刊
  • ISBN978-4-89629-258-9 C3081