近江兄弟社学園をつくった女性 一柳満喜子(ひとつやなぎまきこ)

木村晟 著

近江兄弟社学園の創立者、一柳満喜子(1884~1969)の教育理念とその情熱。

貴族院議員の娘として1884年(明治17)に生まれた一柳満喜子は、近江兄弟社学園(滋賀県近江八幡市)の創立者であり、日本のキリスト教教育の基礎をつくったひとりである。アメリカ留学のときにアリス・ベーコンに教えを受け、帰国後、W・メレル・ヴォーリズと出会い結婚した満喜子は、夫が生涯をかけて取り組んだ「近江ミッション」の教育部門をみずからの手で築き上げた。自立と自由を核とする新しい人間観を子どもたちに伝えようとした一柳満喜子の教育とは、どのようなものだったのか。実際に満喜子の教え子だった著者が、その具体的な教育実践を証言する。巻末に「一柳満喜子略年譜」を収録。

 

■著者

木村晟(きむら・あきら)

1934年滋賀県野洲市生まれ。53年近江兄弟社学園男女共学第1回卒業生。五七年日本大学文学部国文学科(国語学専攻)卒業。博士(文学)。桜美林大学、神戸女子大学、駒澤大学・大学院などを経て、現在、駒澤大学名誉教授。主な著書に『中世辞書の基礎的研究』『下学集・節用集研究』(全3輯)ほか。編著書は約200冊。近江兄弟社学園関係の著書に『帰天していよいよ光彩を放つ勇者のスピリット─平和の使者W・メレル・ヴォーリズの信仰と生涯』『神への讃歌─ヴォーリズと満喜子の祈りと実践の記』『すべては主の御手に委ねて─ヴォーリズと満喜子の信仰と自由』。本書と同時刊行に、『近江兄弟社学園をつくった女性 一柳満喜子』(港の人)がある。

 

■目次

プロローグ

 

第I部 一柳満喜子の教育理念の萌芽・構築

一、生い立ち

二、「キリストを模範とする教育」のテーゼ

1 満喜子の教育的信条の萌芽/2 米国ブリンモア大学へ留学/3 故国からの送金を断わり、アリス・ベーコンに師事する/4 満喜子、やむを得ず帰国する

三、満喜子とヴォーリズの国際結婚

1 夫婦対等の国際結婚の先例はあるか/2 明治学院チャペルでの結婚式

 

第II部 創始の近江兄弟社学園──戦前期の取り組み築

一、「自律・自立」は「自己統制力」を出発点として

1 満喜子の教育理念の樹立/2 清友園幼稚園における幼児教育の実践

二、一柳満喜子の教員養成実践

1 幼稚園教師の養成/2 幼児教育専攻部の開設/3 満喜子の障害者教育

三、「向上学園」に見る満喜子の独創性・独自性

1 近江勤労学校と向上学園か/2 非凡かつ徹底した学園構想/3 戦後、定時制部の創設へ

 

第III部 一柳満喜子の軽井沢における働き

一、戦時中四カ年の逗留生活

1 軽井沢逗留以前の苦しみ/2 「敵を怨むまじ」詩にみる信仰顕現/3 満喜子の大いなる働き─希望は人を生き返らせる!!

二、戦前の軽井沢における満喜子の働き

1 軽井沢における満喜子の交友関係/2 YWCAの活動

 

第IV部 新制近江兄弟社学園のスタート

一、平和憲法下での民主教育の展開

1 学園小中高校の創設/2 近江兄弟社中学校・高等学校の新しい試み/3 ヴォーリズ作詞・満喜子和訳の学園校歌/4 新制高等学校発足と共に「集中授業」実施/5 ワーズワースの英詩「水仙」を鑑賞する

二、一柳満喜子の二四時間訓練

1 二四時間訓練の目指すもの/2 私たち男子も二四時間訓練実施/3 全校生徒参加のキャンプ

三、新制近江兄弟社学園の教員養成の実践

1 新制近江兄弟社学園における研究生制度/2 公立学校教員のための単位認定講習

 

エピローグ

 

■書評

「クリスチャン新聞」2012年12月23・30日

 

 

  • 四六判/ソフトカバー/本文128頁
  • 1,400円(本体価格・税別)
  • 2012年8月刊
  • ISBN978-4-89629-252-7 C0023