高橋虔(たかはしまさし)と近江兄弟社学園

木村晟 著

日本の代表的な聖書文献学者、高橋虔(1903~92)の歩みと業績を、教え子だった著者が慈しみをもって語る。

1920年早稲田中学を卒業した17歳の高橋虔は、滋賀県で近江ミッションを展開していたW・メレル・ヴォーリズに出会う。のち近江兄弟社女学校長、近江兄弟社学園教諭などをつとめて近江兄弟社学園の基礎をつくった。一方、同志社大学神学部教授として、聖書学の発展に寄与した。

また高橋虔は、卓越した語学力の持ち主であり、わが国の聖書を語るときに欠かせない存在でもある。一九五四年の『口語新約聖書』の改訳委員として、さらに七八年の『新約聖書 共同訳』のプロテスタント側の共同編集委員長として、聖書の言葉一句一句にみずからの学識と信仰を傾注したのだった。

彼の「一七歳日記」や近江兄弟社学園にのこした足跡を中心に、学者、教育者、またキリスト者としての高橋虔の一生を考察する。巻末に詳細な「高橋虔主要論文・著作リスト」「高橋虔略年譜」を収録。

 

■著者

木村晟(きむら・あきら)

1934年滋賀県野洲市生まれ。53年近江兄弟社学園男女共学第1回卒業生。五七年日本大学文学部国文学科(国語学専攻)卒業。博士(文学)。桜美林大学、神戸女子大学、駒澤大学・大学院などを経て、現在、駒澤大学名誉教授。主な著書に『中世辞書の基礎的研究』『下学集・節用集研究』(全3輯)ほか。編著書は約200冊。近江兄弟社学園関係の著書に『帰天していよいよ光彩を放つ勇者のスピリット─平和の使者W・メレル・ヴォーリズの信仰と生涯』『神への讃歌─ヴォーリズと満喜子の祈りと実践の記』『すべては主の御手に委ねて─ヴォーリズと満喜子の信仰と自由』。本書と同時刊行に、『近江兄弟社学園をつくった女性 一柳満喜子』(港の人)がある。

 

■目次

プロローグ

艱難を切り拓くもの/それは希望・信仰

第I部 高橋虔の行跡を訪ねる

一、「一七歳日記」に高橋虔の精神的成長の根拠を索める/二、同志社大学文学部神学科在学中/三、イェール大学大学院留学中

第II部 近江兄弟社教育史の基礎を築く

一、近江兄弟社女学校の草創期/二、向上学園・近江聖書塾への協力と兼務/三、近江兄弟社図書館長時代/四、新制近江兄弟社学園の創設期

第III部 同志社大学神学部教授時代以降

一、学位論文『エズラ書ネヘミヤ記』執筆・刊行/二、『口語新訳聖書』の改訳委員として/三、『聖書 新共同訳』の改訳委員長として/四、岳父の評伝『宮川経輝』の執筆・刊行

エピローグ

高橋虔の人格形成/高橋虔の愛唱讃美歌 四九一(きよき朝よ、たのしき日よ)

 

高橋虔主要論文・著作リスト

高橋虔略年譜

後記

 

  • 四六判/ソフトカバー/本文176頁
  • 1,600円(本体価格・税別)
  • 2012年8月
  • ISBN978-4-89629-251-0 C0023