死の影が濃くなるほど、生は甘みを増す。山形在住の女性詩人、新境地の第四詩集。
詩人伊藤啓子は、平凡に暮らす人の心に訪れる何気ない一瞬を鮮やかに切り取ってみせる。視線は女性ならではのものだが、選ぶ言葉には、女性性を突き放す理性がある。そして、日常のすきまにひそむ闇の気配と、心の奥底にひそむかすかな悪意を、つややかな言葉で描き出すのだ。
随所に織り込まれた山形の風景も、濃厚な空気のなかへと読者を誘う。
■著者
伊藤啓子(いとう・けいこ)
1993年 詩集『夢のひと』(視点社)
1996年 共著『ポエム・セッション』(紙草舎)
2000年 詩集『ウコギの家』(夢人館)
2003年 エッセイ集『風が吹いたら…』(みちのく書房)
2005年 詩集『萌野』(夢人館)
■ 目次
夏の夜におとうとが/棚田のひとびと/西馬音内無伴奏/金木犀/終幕/花約束/おとこの家/おんなの家/姫沼伝説/午後の手紙/機屋の八月/夜の甘み/卵屋/夏列車/理科少女/男がひとりで/女がふたりで/冬柿/胴殻汁/さゆりちゃん/身代わり地蔵/迷い鳥/夏庭の子ども/雨期/あの日
■書評
「山形新聞」2010年12月5日
- A5判/ソフトカバー/本文96頁
- 2,000円(本体価格・税別)
- 2010年11月刊
- ISBN978-4-89629-228-2 C0092