曠野と演劇

上田美佐子 著

◎演劇プロデューサーによるエッセイ集。ポーランド、ロシア、イスラエルなど世界各国から優れた公演を呼び、高い評価を得ている東京・両国にある劇場シアターX(カイ)。その芸術監督が熱く激しく語る芸術、演劇、人生。

◎「シアターXニューズレター記」「シアターX批評通信編集前記」「駄目プロデューサー考」「演劇の挑発」「劇場という創造現場」「曠野の風景」の6章にわかれ、作品論、作家論、演劇などについて語った短文、エッセイを収める。芸術とは何か、演劇とは何か、その真の芸術・演劇世界を追求し、数多くの名作を手掛けている著者の発するメッセージは芸術・演劇関係者のみならず、まっとうに人生を歩もうと奮闘している人にも勇気づけ励ましてくれる。

 

■著者

上田美佐子(うえだ・みさこ)

シアターX(カイ)芸術監督・演劇プロデューサー。舞台芸術学院本科(文芸・演出)卒業。新聞記者、雑誌編集者などを経る。1989年、フリーの演劇プロデューサーとして、アンジェイ・ワイダ演出、坂東玉三郎主演、ドストエフスキー原作の『ナスターシャー』を手掛け、成功を収める。1992年に東京・両国にある劇場シアターXの芸術監督・演劇プロデューサーに就任。芸術家たちの創造活動の現場たる劇場を目指し、ヴィトカッツイをはじめ、チェーホフ、ブレヒト、郡司正勝、花田清輝等の作品を精力的に公演し続ける。その傍らNPO法人シアターコレクティヴを立ち上げ、若手の芸術家、演劇人の育成に努めている。

 

■目次

シアターXニューズレター記

東京・両国に新しく生まれる「劇場」について プロローグ/芸術家とシアターX 許容するがゆえに妥協しない/刺激を創り続けている人たち/勝たねば責任は果たせまい……/モノでは動かないイノセントたち/『冬の旅』する芸術家たち/(他)

 

シアターX批評通信編集前記

 

駄目プロデューサー考

おかげさまでシアターXも/デュラスの『アガタ』なるものが/上演に当たっての暴論/「やりたいのだから、実現する」─という奇蹟人たちと。/駄目プロデューサー考/直感す/煮えたぎる思いと非情な批評精神と/ねずみの抜け道は? /事故死したはずの妖怪への恐怖感/自由奔放人の盟友/泥棒するか 乞食するか/内なるブレヒト内なるウイ/(他)

 

演劇の挑発

おばあちゃんと、非情さと/ニューヨークのラ・ママ劇場から里帰り『景清/拘留』/古典・近代古典の魅力 メイド・イン・ジャパンとカビくささと/乱世の真打ち、イプセンを/「ロシア人のメッセージ」の衝撃/K氏を推理する/『ブレヒト的ブレヒト演劇祭』ブレヒト・魯迅・花田清輝と歩く/チェーホフの挑発/魅せられて、ブレヒト/心荒ぶらせる「阿修羅」 天沼裕子「裏切る心臓」初演

 

劇場という創造現場

客と役者の演劇バトル/芸術家が劇場を劇場に育てる/『王女イヴォナ』公演の経緯について/シアターX砦五年間の攻防/「劇場」という創造現場で、演劇芸術の課題を追い、歩く。/劇場経営・製作者の仕事と責任/(他)

 

曠野の風景

ワイダさんとドストエフスキー/ポーランド演劇の衝撃波、続く……/エヴァ・デマルチクのレコードを/九十歳になられた大野一雄さんの/郡司正勝先生 最後の作品/「悪意」継承の歓び/生きる源 今の私を生み出した満州での日々

 

■書評

しんぶん赤旗2010年9月5日


日本經済新聞2010年7月7日夕刊


東都よみうり2010年7月30日号


図書新聞2010年7月31日号

 

 

  • A5判変型/上製本/カバー装/本文240頁
  • 2,400円(本体価格・税別)
  • 2010年5月刊
  • ISBN978-4-89629-222-0 C0074