解読『英和対訳袖珍辞書』原稿 初版および再版

堀 孝彦 編著
三好 彰 編著

150年の眠りから覚めて発見された、わが国初の印刷された本格的な英和辞書『英和対訳袖珍辞書』(初版1862・文久2)原稿類。幕末維新期の洋学事情を知ることのできる第1級史料で、発見された原稿は、手書きの初版草稿21枚とその朱筆訂正、刊行された初版へ朱書訂正された原稿124頁とからなる。本書はそれらの文字や記号全体を解読し、翻刻したテキストおよび注記と、解説である。

 

■「はじめに」より

従来この辞書(『英和対訳袖珍辞書』)は、ピカールの英蘭辞書を底本として見出し語を拾い、当時活用できた『和蘭字彙』などから和訳語をきめたので、短期間に編集できたと言われてきた。ところが、この手書き草稿は、朱に染まるほど何度も校正されており、異なる校正段階の原稿が混在しているではないか。もし通説の通りならば、そもそも校正自体がほとんど不要だったはずである。このことを初めとして、少なからず通説も相対化を余儀なくされることが、解読の過程で浮上してきている。

(中略)

幾何の問題を解くのに補助線を引くが、この原稿史料は『英和対訳袖珍辞書』を分析考察するための、またとない絶好の《補助線》の役割を果たしてくれよう。校正で朱に染まった辞書原稿を手にして、幕末の若き英学徒らが命を削る思いで突貫作業し、開国から近代化への道を切り開く一助を担った筆魂の跡が読み取れ、その息遣いにまで触れることができた。

 

■編著者

堀孝彦(ほり・たかひこ)

1931年生まれる

学歴

1954年、東京大学文学部倫理学科卒業

1961年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程倫理学専攻単位終了

職歴

1961~1986年、福島大学教員(教育学部)倫理学、社会思想史担当

1986~2001年、名古屋学院大学教授(経済学部)

学会

社会思想史学会、日本英学史学会、日本平和学会

主著

1983年『近代の社会倫理思想』青木書店

1999年『英和対訳袖珍辞書の遍歴』(遠藤智夫と共著)辞游社

2001年『英学と堀達之助』雄松堂出版

2002年『日本における近代倫理の屈折』未来社

2006年『私注「戦後」倫理ノート 1958_2003』港の人

2009年『大西祝「良心起原論」を読む』学術出版会ほか

 

三好彰(みよし・あきら)

1940年生まれる

学歴

1966年、京都大学大学院工学研究科修士課程修了、電気工学専攻

職歴

1966年、東芝入社。コンピュータの技術開発、企画に従事

2002年、同社定年(扱)退職

学会

日本英学史学会、情報処理学会

論文

2006年「英和対訳袖珍辞書における野鳥の訳語の考察」『英学史研究』第39 号

2007年「『英和対訳袖珍辞書』の草稿および校正原稿の考察『英学史研究』第40 号

2008年「『英和対訳袖珍辞書』の底本の編纂者H. Picard『英学史研究』第41 号ほか

 

■目次

はじめに―補助線としての原稿史料

『英和対訳袖珍辞書』について

原稿史料の構成

関連年表

解読『英和対訳袖珍辞書』初版草稿および改正増補版校正原稿

凡例

1 初版草稿

2 改正増補版校正原稿

解説『英和対訳袖珍辞書』辞書の背景と‘ We’(編纂者たち) 堀 孝彦

1 『英和対訳袖珍辞書』の背景

2 『英和対訳袖珍辞書』編纂と発見された原稿史料

3 原稿史料にみる訳語比較――Ethics, Democracy, Denizen

結び

原稿史料の構成(一覧表)

あとがき

 

 

  • A4判/上製本/函入/本文208頁
  • 15,000円(本体価格・税別)
  • 2010年6月刊
  • ISBN978-4-89629-221-3 C3081