W. D. スノッドグラス詩集

W. D. スノッドグラス 著
新倉俊一 訳
西原克政 訳

W. D. スノッドグラスは、1960年にピュリッツアー賞を受賞したアメリカの代表的詩人。幅広い抒情性と深い人生洞察の織りなす作品群は高い評価を受けている。本書は、詩の翻訳や詩論で多くの著書を持つふたりの訳者が、この詩人に授かった薫陶を胸に、主要な作品を選び出し、翻訳をおこなったもの。スノッドグラスの詩の世界を初めて日本に紹介する貴重な一書である。個人的な思い出をまじえた、新倉俊一による書き下ろし解説を収録。

 

■スノッドグラスについて

W. D. スノッドグラス W. D. Snodgrass

1926 年にペンシルヴェニア州ウィルキンズバーグに生まれる。ジェニーヴァ大学で学んだ後、海軍に入隊する。除隊後、アイオワ州立大学でロバート・ローエルやランダル・ジャレルから詩の創作を学ぶ。1959 年に刊行した第一詩集『心の針』で衝撃的なデビューを果たし、翌年ピュリッツアー賞を受賞する。1968年の詩集『経験のあとで』は、絵画を基にした詩や翻訳詩が含まれ、多彩な才能が発揮されているにもかかわらず、世間的な評価はいまひとつであった。第一詩集『心の針』のインパクトがあまりに強烈で、彼は告白詩という運動の旗手とみなされたが、自身はその範疇に収められるのを不服としていた。その後のさまざまな音域を広げてゆく大胆な試みも、かすんで見られてしまう傾向にあった。しかし、韻律の整った詩も自由詩も自在にこなす彼のみごとな技巧と詩の誠実さを、こよなく愛する読者は数多い。『総統の地下壕』(1977)は全米批評家賞にノミネートされた。そのほかの詩集に、『選詩集1957 ‐ 1987』(1987)、『めいめいの良い時節に』(1993)、『専門家のためでなく』(2006)等がある。2009 年1 月13 日に逝去。

 

■訳者

新倉俊一(にいくら・としかず)

1930 年生まれ。明治学院大学名誉教授。西脇順三郎の全集や定本全詩集のテクストの校訂をはじめ、英詩集の翻訳に携わる。著訳書に、『西脇順三郎全詩引喩集成』(筑摩書房)、『西脇順三郎 変容の伝統』(東峰書房)、『エズラ・パウンド詩集』(角川書店)、『エズラ・パウンド詩集』(小沢書店)、『アメリカ詩の世界』(大修館書店)、『エミリー・ディキンスン 不在の肖像』(大修館書店)、『詩人たちの世紀 西脇順三郎とエズラ・パウンド』(みすず書房、ロゲンドルフ賞)、『ピサ詩篇』(みすず書房)、『評伝 西脇順三郎』(慶應義塾大学出版会、和辻哲郎文化賞、山本健吉文学賞)、『西脇順三郎コレクション』(全6 巻、編者、慶應義塾大学出版会)、『西脇順三郎 絵画的旅』(慶應義塾大学出版会)ほか。

西原克政(にしはら・かつまさ)

1954 年生まれ。関東学院大学教授。エズラ・パウンドを中心にしたモダニズムや日本の近現代詩の翻訳にも携わる。著訳書に、『想像力の磁場』(北星堂書店)、『アメリカのライト・ヴァース』(港の人)、『トーキング・ボディ』(共著、港の人)、『ビート・ヴィジョン』(共訳、思潮社)、『英語ことば遊び事典』(共訳、大修館書店)、『世界の詩論』(共訳、青土社)、The Singing Heart(co-trans., Katydid Book)、『アメリカ子供詩集』(共訳、国文社)、『対訳 岩魚』(共訳、童話屋)、『えいご・のはらうた』(共訳、童話屋)ほか。

 

■目次

心の針/公園のダンス/沼沢地/四月の自己点検評価表/部分月食/眠れぬまま横になって/見ること/ヴァン・ゴッホ「星月夜」/マチス「赤のアトリエ」/ゲッベルス宣伝相/エバ・ブラウン/検死官の審問ヒステリックな学者たちにばかにされた詩人

 

解説 「心の針」の抒情詩人── In Memoriam W. D. Snodgrass 新倉俊一

 

 

  • A5判変型/ソフトカバー/本文84頁
  • 1,800円(本体価格・税別)
  • 2012年2月刊
  • ISBN978-4-89629-218-3 C0098
  • ※品切れ