文献日本語学

今野真二 著

テキスト=文献には情報が構造化されて埋め込まれている。わたしたちはそこから何を読み取ることができるのだろうか。文献学+日本語学の複眼的なアプローチを具体的に示し、新たな「文献日本語学」を提言する。

 

■著者

今野真二(こんの・しんじ)

1958年、神奈川県鎌倉市生まれ。高知大学助教授を経て、清泉女子大学文学部教授。日本語学専攻。早稲田大学大学院博士課程後期退学。著書に『仮名表記論攷』(清文堂出版・第30回金田一京助博士記念賞受賞)、『文献から読み解く日本語の歴史【鳥瞰虫瞰】』『消された漱石 明治の日本語の探し方』(笠間書院)『振仮名の歴史』(集英社新書)などがある。

 

■目次

はじめに

文献日本語学と文献国語史 「文献」は古くなくてはいけないか?

本書の構成について

 

第一章 文献日本語学

第一節 内省による言語学/内省によらない言語学

第二節 文献学

第三節 文献学の今昔

第四節 文献日本語学

第五節 「本文」とは何か?

 

第二章 手書された文献

第一節 『竹取物語』─平安期成立作品の室町期写本─

物語の出で来はじめの祖/『竹取物語』の古さ/

現存最古の『竹取物語』武藤本『竹取物語』の奥書からわかること/重層的な本文の生成過程/何を武藤本とみなせばよいのか?/日本語学の分析素材としての文献=テキスト/テキストからどのような「情報」を引き出すか/新日本古典文学大系『竹取物語伊勢物語』/なぜ「異本校合の結果」と判断したか?/中院通勝はどう考えていたか?/仮名に施された振り仮名/異体仮名から武藤本の書写原本を窺う/武藤本の書写原本の古さ

第二節 『宇治拾遺物語』─鎌倉期成立作品の近世期写本─

『宇治拾遺物語』について/『宇治拾遺物語』の手写本について/三つのテキストを並べてみる/何を問題にするか/「連用形+テ」に着目する/異体仮名/変体仮名について/「使い分け」ということ/異体仮名の使用をめぐる「使い分け」という言説/三つのテキストの異体仮名に着目する/人屋と獄と/

第三節 『宇治拾遺物語』『古本説話集』『今昔物語集』

同文同話ということ/言語面からみた同一性/漢字で書くか仮名で書くかウルワシをどう漢字で書くか/一つの語に五種類の漢字があてられている/容姿のウツクシサは「美」と書く/ヨナカ/ヤハン 夜中/夜半/「かなづかい」という観点から何がわかるか/「仮名文字遣」という観点から何がわかるか

 

第三章 印刷された文献

第一節 キリシタン版『太平記抜書』

文字化の「方法」としての印刷/文字化の方法は〈文字社会〉の広狭に関わる/言語情報の授受の分担/活字印刷と整版印刷と/キリシタン版『太平記抜書』を翻字する/整版本との対照/対照文献日本語学/『日葡辞書』に引用されている『太平記』/

第二節 『中華若木詩抄』

『中華若木詩抄』のテキスト/古活字版『中華若木詩抄』/テキスト本文の伝わり方/「同じ」テキスト/古活字版と寛永十年版本/寛永十年版本の表記をめぐって

第三節 『からいとさうし』

挿絵に注目すると/なぜ異なっているのか?/まんしゆのひめ//まんしゆひめ/埋め込まれる「ノ」/『万葉集』における「読み添え」/まんしゆひめはマンジュノヒメか?/助詞の有無/両本の異同の諸相

第四節 草双紙

挿絵+本文/「表記体」からみた草双紙/三つの「表記体」  仮名書きをどう考えるか?/草双紙の漢字列

 

第四章 手で書かれた文献と印刷された文献との対照

第一節 荒木田守武「守武千句」

「同じ書き方」とは?/〈可〉と〈か〉との使い方/漢字で書くか仮名で書くか/漢字で書く場合にどのような漢字をあてるか/漢字の書き分け/平仮名を使うか片仮名を使うか

第二節 『弁慶物語』

寛永二十年奥書本の振仮名/仮名に施された振仮名/寛永二十年奥書本の〈須〉/漢字に施された振仮名/寛永二十年奥書本の書かれ方/和歌の書き方/寛永二十年奥書本の仮名書き/古活字版と寛永二十年奥書本とは酷似しているのか?

 

おわりに

 

 

  • 四六判/ソフトカバー/本文272頁
  • 2,800円(本体価格・税別)
  • 2009年10月刊
  • ISBN978-4-89629-214-5 C3081