植物の根のように絡みつく記憶の闇底にひそむ、かめという女はだれか。
詩人の生きる源(みなもと)を時代をさかのぼって掘り起こした力作詩編。
■「あとがき」より
幼い頃から私は、ここで起こっている現実ではない、別の世界を感じていました。その世界は時々現実より饒舌でした。楽しくもあったのですが、自分がどこにいるのかままならず、おかしな女のコに見えたでしょう。名付けようもない何かを、自分だけしか感じられないかすかな震えを、言葉を使ってこちら側に炙り出すことができないかと試みました。書くことで、私は狂わずに済んだのです。
第一詩集は『家』でした。家はいくらでも書かせてくれましたが、私はその迸るほどの何かを受け止める言葉を用意できませんでした。それどころか恐ろしくなって追い返してしまったのです。(中略)あれから二十数年、私は怖くて怖くて逃げ回っていました。でもどんなに逃げてもいつも同じ場所にもどってきてしまう。そしてとうとう両足首をひっつかまれて、引き摺りこまれてしまったのです。(「あとがき」より)
■目次
かめという女の記憶/斎場/鬼遣らい/八手の間/竹矢来/跛行/三尸虫/嚏/獣道/かめ女 I/下墅國都賀郡大川嶋村/かめ女 II/植物に関する思考 1/植物に関する思考 2/植物に関する思考 3/ササミキ/足尾にて/鎮魂祭
- A5判/ソフトカバー/函入(題箋貼り)/本文96頁/本文緑色印刷
- 2,000円(本体価格・税別)
- 2009年9月刊
- ISBN978-4-89629-210-7 C0092