賢治童話を読む 港の人児童文化研究叢書003

関口安義 著

本文600ページを超え、あらたな賢治童話研究の地平線をひらく大作。

芥川研究第一人者の著者が芥川と同時代を生きた宮沢賢治について、芥川と比較・対照しながら論じ、近代に生きた知識人のありかたを探る画期的な試み。またキリスト教の視点から賢治童話(32編)を読み解き、あらたな賢治の世界を提示。巻末に人名・事項索引付。賢治ファン待望の書、誕生する。

2015年7月に『続 賢治童話を読む』刊行

 

■著者

関口安義(せきぐち・やすよし)

文芸評論家・都留文科大学名誉教授。1935年埼玉県生まれ。芥川龍之介研究の第一人者。主著に『芥川龍之介』『芥川龍之介とその時代』『芥川龍之介の歴史認識』『世界文学としての芥川龍之介』ほか多数。

 

■「序章 なぜ、賢治童話か」より

宮沢賢治と芥川龍之介は、実は同時代を生きた人なのである。龍之介は一八九二(明治二五)年三月一日、賢治は一八九六(明治二九)年八月二十七日の生まれ。その年齢差は四歳、まさしく同時代人である。龍之介は日本の首都東京に、賢治は当時辺境とされた東北花巻に生まれ、育った。近代日本の天皇制中央集権国家が急速に整えられつつあった時代である。二人が生きた時代には、三つの大きな戦争があった。日清戦争と日露戦争と第一次世界大戦である。時代は二人の文学に確実に刻印されている。二人はともに三十代半ばに世を去っている。中央と地方の差はあるものの、近代の日本を精いっぱい生き、それぞれユニークで高度の作品を残し、闘いの生涯を終えたのである。この二人の同時代人を比較・対照することは近代日本を生きた知識人の精神史の解明につながるのではないか。

 

■目次

序章 なぜ、賢治童話か

第1章

童心と笑い/鹿踊りのはじまり/山男の四月/セロ弾きのゴーシュ/風の又三郎

第2章

ファンタジーの風景/月夜のでんしんばしら/どんぐりと山猫/注文の多い料理店/雪渡り

第3章

自然と人間/かしはばやしの夜 /狼森と笊森、盗森/水仙月の四日/やまなし

第4章

不条理の物語/雁の童子 /黄いろのトマト/オツベルと象/猫の事務所

第5章

心象の世界/双子の星/ひかりの素足/ガドルフの百合/シグナルとシグナレス

第6章

幸せとはなにか/カイロ団長/虔十公園林/マグノリアの木/ポラーノの広場

第7章

平和への願い/貝の火/烏の北斗七星/北守将軍と三人兄弟の医者/グスコーブドリの伝記

第8章

原罪との闘い/よだかの星/氷河鼠の毛皮/フランドン農学校の豚/なめとこ山の熊

 

あとがき

人名・事項索引

 

■書評

山梨日日新聞2009年1月30日


岩手日報2009年2月7日


週刊読書人2009年3月13日


キリスト教新聞2009年3月21日

 

月刊国語教育2009年4月号

 

 

  • A5判/上製本/本文634頁/口絵2頁/函入
  • 9,000円(本体価格・税別)
  • 2008年12月刊
  • ISBN978-4-89629-202-2 C3395