◎21世紀、環境の時代に先駆けて、森を開発から守った市民運動の感動の全記録。
鎌倉郊外の貴重な森「広町緑地」を守るため、住民たちは25年にもわたって粘り強く運動を続けた。一致団結して運動の渦を広げ、ついには政治をも動かして、森を開発から守ったのである。無名の市民たちが、汗と涙を流し、知恵と言葉で闘った運動の全記録。なぜこれほど頑張り続けることができたのか、なぜ運動を成功させることができたのか、その答えがここにある。
◎発端から保全達成までの住民運動のうねりをいきいきと伝えます。
◎環境経済学者、福岡克也氏による寄稿「広町緑地保全運動に学ぶ」
◎具体的な運動の手法についての解説も豊富、また巻末資料として、運動のなかで作成された陳情書や声明書などの文書を掲載。住民運動関係者、必読の書。
■著者
鎌倉の自然を守る連合会
1984年、広町緑地の保全を目標として結成された市民団体。広町緑地周辺の自治会・町内会から組織される。署名運動、市民集会、ナショナルトラスト運動など、さまざまな手法による保全運動を展開し、広町緑地保全運動の中心的役割を担った。
鎌倉広町緑地とは、鎌倉市西南部にある約60ヘクタールの丘陵地。多様な樹木に覆われた山や谷の奥から流れる湧水がつくる湿地帯によって育まれた豊かな生態系は、首都圏では他に例のない貴重なもの。2002年に、鎌倉市が開発事業者から土地を買上げ、広町緑地の保全が達成される。現在は「都市林」に指定され、鎌倉市と市民が共同で整備をおこなっている。
■目次
第1章
誰が森を守るのか/自治会を基盤とする保全運動/小さな発端/山を守る知恵/住民たちへのアンケート/緑を守る専門委員会誕生/広町の森と親しむ/初めての陳情/組織強化される「緑の会」/広町の問題をより多くの人に/初期に固められた運動の基盤
第2章
非常識への挑戦/六万人署名と「鎌倉の自然を守る連合会」の結成/進む開発計画/初めての署名運動/六万人大署名のインパクト/「鎌倉の自然を守る連合会」結成
第3章
市民運動の拡大と深化/市民集会と「緑保全に関する調査報告書」/熱気に包まれた初めての市民集会/決議文にこめられた願い/なぜ緑は守らねばならないか/「保全は可能」という手ごたえ/緑基金のスタート/箱モノより緑を
第4章
逆風に向かって/開発事業者や市長と対決する市民/女の一揆/市長再選のショック/一二万人の署名運動/市長への激しい抗議/開発事業者と最初の直接対決へ/市長に詰めよる市民/言葉を獲得した市民
第5章
鎌倉を揺るがす市民/市長選挙と二二万人署名/市民のための政治をおこなう市長を/「緑条例」を願う二二万人署名/バブル崩壊から環境の世紀へ
第6章
絡まる糸/三者協議と条例制定の険しい道/市民・開発事業者・市の協議と対立/平行線をたどる住民と開発事業者/「緑条例」制定の混乱/混乱の余波と収拾
第7章
緑保全の強い意思表明/鎌倉広町みどりトラスト/開発手続きの再開/広町の森を守る緊急市民集会/もはやトラスト運動しかない/鎌倉広町みどりトラスト始動/トラスト運動への応援/トラスト運動の実際/第一次トラスト運動のみごとな成果
第8章
踏みこたえる市民/紛糾する住民説明会/粘り強く問い詰める住民/二二回もの住民説明会/第二次トラスト運動へ/大きく展開するトラスト運動
第9章
保全策の模索/開発事業者との瀬戸際の攻防/市長の苦闘/市民が参加した環境アセスメント/緑を守る方法/市の保全策決定へ/
開発事業者との駆け引き
第10章
願いを一つに集めて/一団となって直接行動へ/三市民団体共催の市民集会/新市長とともに/三市民団体による直接訪問/最後の総攻撃/買い取り価格をめぐって
第11章
広町の森は守られた/悲願の全面保全達成/全面保全実現へ!/買い上げ手続き/そして森は市民のものとなった
第12章
共生の未来へ/歩みを続ける「鎌倉の自然を守る連合会」/より良い「都市林」を目指して/自然環境への理解を深める/「鎌倉の自然を守る連合会」のこれから
寄稿「広町緑地保全運動に学ぶ」福岡克也
資料
鎌倉広町緑地保全運動関係のおもな陳情書/鎌倉広町緑地保全運動関係の文書リスト/鎌倉広町緑地保全運動史年表
あとがき
■書評
毎日新聞2008年11月28日
東京新聞2008年12月14日
「時事トップ・コンフィデンシャル」2009月2月3日
日経新聞2009年2月15日
図書新聞2009年3月14日
神奈川新聞2009年3月8日
読売新聞2009年4月9日
- A5判/上製本/本文312頁/口絵1丁/カバー装
- 2,600円(本体価格・税別)
- 2008年12月刊
- ISBN978-4-89629-201-5 C0036