光が射してくる 未刊行詩とエッセイ1946-1992

北村太郎 著

隠された半世紀にわたる詩人の営為の記録。

鮎川信夫、田村隆一らと共に「荒地」派として活躍し、生と死を凝視した独自の詩世界をひらいた北村太郎。戦後の出発点をしめす1946年、47年の幻の初期詩篇から、亡くなる年92年までの貴重なエッセイ、300頁におよぶ「読書案内」など著作集、単行本未収録作品を初めての刊行。

港の人創立10周年記念出版

 

■著者

北村太郎(きたむら・たろう)

1922年11月17日、東京の谷中に生まれる。本名・松村文雄。東大仏文科卒。戦前に同人誌「ル・バル」に参加、47年、鮎川信夫、田村隆一らとともに「荒地」を創刊。66年、第一詩集『北村太郎詩集』を刊行。以後数多くの詩集を上梓し、繊細な感性をもとに生と死を凝視した独自の詩世界をひらいた。おもな著書に、詩集『冬の当直』『犬の時代』(芸術選奨文部大臣賞)『港の人』(読売文学賞)、散文集『パスカルの大きな眼』『世紀末の微光』『センチメンタルジャーニー』『樹上の猫』(港の人)ほか多数。著作集に『北村太郎の仕事』(全3巻)がある。92年10月16日没。

 

■おもな内容

1946年から1992年までの未刊行・未収録作品

幻の初期詩篇として発見された「亡霊」「沈黙」「芥川多加志の霊にささぐ 弔歌」ほか

戦後いちはやく、カフカの「変身」を論及した評論「『変身』について」

「『裏窓』とヒッチコック」「現代アメリカ文学と映画」など映画評論

1950年代、中原淳一主宰の雑誌「ひまわり」「それいゆ」などに連載した「読書案内」(300頁)

 

■目次

[エッセイ]

すい

 

[詩篇]

亡霊/芥川多加志の霊にささぐ 弔歌/AMOROS MA NON TROPPO 愛をこめて されど適度に/沈黙/秋の歌/青の時代/プレーボール

 

[エッセイ 1947/1949]

伝統の否定/生長する畸型児/『変身』について/現代詩の世界/夜のいのちの中へ

 

[エッセイ 1955/1956/1958]

『裏窓』とヒッチコック/三つ数えろ/現代アメリカ文学と映画/泥棒成金/ピクニック/坂本明子『地に臥す』/どこか遠くの方から……

 

[エッセイ 1960/1961]

G・グリーン/グレアム・グリーン『燃えつきた人間』

 

[エッセイ 1970/1973/1974/1977/1978]

会社づとめ/小児性/田村隆一『詩と批評A』/牧水に熱中した十六歳のころ/秋谷豊『さらば美しい村よ』/非読書人の感想/郷原宏『風の距離』/すぐれた作品を読む喜び 「現代詩手帖」の特集号/内職/牛乳ぎらい/ナスとジュース/私と言葉/自動車運転のこと 人生は不可測という思い/弔辞 石原吉郎追悼/文中敬称略

 

[エッセイ 1981/1982/1989]

詩集の出版は安易に流れすぎていないか/女性詩人特集に見られる塩気の乏しい詩壇/現代連句は芸術として自立しうるか/AHI再読

 

[エッセイ 1989/1990/1991/1992]

現代詩雑感(講演)/したたかな〈殺〉性/随筆 選後評「藤楓文芸」第21刊/随筆 選後評「藤楓文芸」第22刊/随筆 選後評「藤楓文芸」第23刊

 

[読書案内「ひまわり」1951/1952]

『サン・ルイス・レイ橋』ソーントン・ワイルダー/『オリヴィア』オリヴィア/『沼の家の娘』セルマ・ラーゲルレーフ/『瀕死の春』ラヨシュ・ジラヒ/『颱風』ジョゼフ・コンラッド/『山のかなた』シュミットボン/『マリオと魔術師』トオマス・マン/『ポム・ダニス─或る不具の少女の物語─』フランシス・ジャム/『ヨーヌィチ』チェーホフ/『いまひとたびの春』ロバート・ネイサン/『少女・園遊会』キャサリン・マンスフィールド/『郷愁(ペーター・カーメンチント)』ヘルマン・ヘッセ

 

[読書案内「ジュニアそれいゆ」1953/1955/1956/1957]

読書の公理/十代の必読図書 辞典と詩集/電車の中で読む本と夜寝るまえに読む本/夏休みの読書のために/読書は心の底におろされた錨/おすすめしたい詩集と小説集/『リチャード三世』シェイクスピア/『花の文化史』春山行夫/『季節の花』松田修/『魚の紳士録』末広恭雄/『こぶとり爺さん・かちかち山』関敬吾編/『漱石全集第十二巻 心』夏目漱石/『ギリシア神話』ピエール・グリマル『ギリシア神話』アポロドーロス『ギリシア神話』呉茂一/『新版 毎日の言葉』柳田国男/『モゴール族探検記』梅樟忠夫/『潟・エイミイ・フォスター』ジョゼフ・コンラッド/『日本のお天気』気象庁天気相談所篇/『俳句の世界』山本健吉/『日本語』金田一春彦/『菊・大連峰』ジョン・スタインベック/『寺田寅彦随筆集』第一巻-第五巻 小宮豊隆編/『富嶽百景・走れメロス 他八』太宰治/『お山の童子と八人の赤ん坊』北畠八穂/『日本語の起源』大野晋/『魔の群島・パートルビイ』ハーマン・メルヴィル/『十二夜』シェイクスピア/『夜の樹・ミリアム』トルーマン・カポート/『日本童謡集』与田凖一編/『黄色い猫の秘密』『青いにしんの秘密』エラリイ・クイン/『イギリス風物誌』横川信義/『車輪の下』ヘルマン・ヘツセ/『サローヤン短篇集』ウィリアム・サローヤン/『サキ短篇集』サキ/『博物誌』串田孫一/『日本の季節(動物)』大後美保/

『母と子の対話 音楽鑑賞のすべて』園部四郎/『地球の歴史』『日本列島』井尻正二・湊正雄共著/『ヴィヨンの妻・桜桃』太宰治/『科学の方法』中谷宇吉郎/『台風 猛威への挑戦』荒川秀俊/『結婚式のメンバー』カースン・マッカラーズ/『少年・少女世界の旅 オーストラリア編』カスリン・モンペニイ/『ルバイヤート』オマル・ハイヤーム/『死後の世界』フランソワ・グレゴワール

 

[読書案内「それいゆ」1953/1957/1958/1959/1960]

二人の本棚/『方丈記・徒然草』/『笑うサム・心高原にあるもの』ウィリアム・サロイアン/『花の文化史 第三』春山行夫/『世界を変えた本』ロバート・ダウンズ/『日本および日本人』福田恆存/『忠臣蔵』戸板康二/『裏切への道』エリック・アンブラー/『心は孤独な猟人他』カースン・マッカラーズ/『闇の奥』ジョゼフ・コンラッド/『ジャン・バロワ』(上下)マルタン・デュ・ガール/『盗まれた街』ジャック・フィニィ/『女性・文学・人生』阿部知二/『読書家の散歩』春山行夫/『日本の美術』河北倫明/『ライオンと影』クリストファ・イシャウッド/『パスカル』ロマーノ・グァルディーニ/『随筆女ひと』『随筆続女ひと』室生犀星/『いさなとり』『幸田露伴紀行文集』幸田露伴/『現代詩作法』鮎川信夫/『粘土に書かれた歴史(メソポタミア文明の話)』E・キエラ/『ヨーロッパの何処かで』ミッシェル・デル・カスティリョ/『ナイン・テイラーズ』ドロシー・セイヤーズ/『キリストが死んだ日』ジム・ビショップ/『人とつき合う法』河盛好蔵/『オレとボク』池部良/『現代教養全集2 世界への目』臼井吉見編/『ひとり暮しを楽しく』吉沢久子/『「造花」その技術と応用』飯田深雪/『花ことば』春山行夫/『光の中を歩む子ら』品川博/『思想の流れ』荒正人/『現代に生きる信条』ホイット・バーネット編/『イーリアス』(上中下)ホメーロス/『我が愛する詩人の伝記』室生犀星/『犬のすべて』E・J・ファンベール/『職人─建築家の回想』竹田米吉/『螢草』結城信一/『わたしが子どもだったころ』ケストナー/『日本料理十二か月』中江百合/『未開の顔・文明の顔』中根千枝/『孤独と愛(我と汝の問題)』マルティン・ブーバー/『ダブリン人』ジェイムズ・ジョイス/『人生と文学』サマセット・モーム/『芸術の意味』ハーバート・リード/『デミアン』ヘルマン・ヘッセ/五つの小説にあらわれた「愛」について/『ギリシア・ローマ古典劇集』/『ずいひつ 白』岡部伊都子/『路上』ジャック・ケルーアック/『消しゴム』アラン・ロブグリエ/『ハバナの男』グレアム・グリーン/『ナルチスとゴルトムント(愛と死の遍歴)』(上下)ヘルマン・ヘッセ/『年刊推理小説ベスト10 1960年版』/『チェーホフ全集 第12巻』チェーホフ/『デルチェフ裁判』エリック・アンブラー/『孤独な散歩者の夢想』ジャン・ジャック・ルソー/『どくとるマンボウ航海記』北杜夫/『ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティー/うつりかわる恋愛観

 

■書評

東京新聞2007年12月23日号

 

週刊朝日2007年12月28日号

 

毎日新聞2008年1月13日号

 

読売ウィークリー2008年1月6・13日合併号

 

サライ2008年2月21日号

 

週刊読書人2008年2月8日号

 

 

 

  • 四六判/フランス装/536頁
  • 3,800円(本体価格・税別)
  • 2007年11月刊
  • ISBN978-4-89629-187-2 C0095