エリザベス・ジェニングスとイエーツ、漢詩、そして自作から、秋をテーマにした作品をセレクトしたアンソロジー詩集。
もはや露を置く大葉はないが
菊はまだ霜にもめげず
頭をもたげている
ねえ君
一年でもいまが一番の好季節だ
そう思わないか
ごらん、あそこの橙は
あんなに黄色で
蜜柑は
実に青々しているじゃないか
――「秋の好日」(蘇東坡 加島祥造/訳)より
紅に燃えるドーダンも
籬の青い竹叢も
その外の田圃も柿の木も唐松も
すべてが秋の光を浴びている―おれも
これらの草木に負けずに
この澄みきった光と温みを
エンジョイしている――
これは贅沢きわまる一刻だ!
――「クリスピイな空気」(加島祥造)より
「加島祥造セレクション」は、翻訳家としての経験と詩人としての感性によってきわめられた翻訳詩の世界を集める。
■著者
加島祥造(かじま・しょうぞう)
1923年生まれ。アメリカ文学者としてフォークナー、トウェインをはじめ、数多くの翻訳・著作を手がける。また若い頃より詩グループ「荒地」に参加、詩人としても活躍。『タオ―老子』(筑摩書房)『伊那谷の老子』(朝日文庫)など老子関連ほか、詩集、画集、随想集など数多くの著作を持つ。
■目次
(作者名のない詩は加島祥造作、訳詩はすべて加島祥造による)
prologue 秋のはじめの歌 エリザベス・ジェニングス
I
薄明/いちばん楽な姿勢/刑風/秋の光/愁いの路は/天の窓/若いコオロギ/となりにいない友に
II 訳詩
「たそがれと鶴と」白楽天/「庭隅の菊に」白楽天/「月の光に」李賀/「愁いを開く歌」李賀/「秋の好日」蘇東坡/「夜遊び」蘇東坡/「南山を見る」陶淵明
III
クレアモントの秋/クリスピイな空気/秋興/秋のバラード/ただ、ただ/鳶と稲穂/ある秋の夜のこと
epilogue クール湖の白鳥 W・B・イエーツ
- A5判/上製本/カバー装/本文120頁
- 1,800円(本体価格・税別)
- 2007年10月刊
- ISBN978-4-89629-181-0 C0398