結露の風景

坂本絢世 著

詩人の第2詩集。みずみずしい言葉のローケション。

私の内側の/透明であったはずの部分が/荒々しい水滴で曇っている。(本書「結露の風景」より)

 

■著者

坂本絢世(さかもと・あやよ)

1935年さいたま市生まれ。1955年、詩集「風の中のできごと」(書肆とい)。「詩苑」「詩人倶楽部」もと同人。「そんじゅり」(休刊中)会員。「帆翔」同人。

 

■「あとがき」より

からだの闇の奥底から吹き上げてくるもの、それを情念と呼ぶのか。

生きるかなしみをほおばって詩人は、空にむかってみずみずしいことばを垂直に穿つ。

「詩集をつくることはないと心にきめております」と長い間云いつつ、周囲の方たちに背中を押されて、初めての詩集「風の中のできごと」を上梓して十年が過ぎました。今回は自分で自分の背中を押すものがありました。

それは、この十年の間にあまりに多くの近しいひとたちを失い、ひとときことばを見失うほどでしたが、気がつくと自分がまた言葉さがしの中にいることがわかったからでした。

それらはノートの片隅にとどめておいてもよかったのですが、重い閉塞感の中で過ごしながら紡いでいた言葉たちを、一歩踏み出して外に出してみようかと思ったのでした。

それらは単なるつぶやきだったか、咆哮だったか判断しかねるところもありますが、ひとつの形にしてみたいと思いました。

詩はそれぞれの感性、美意識などが混在してとらえ難いものではありますが、そのとらえ難いものにとらえられて彷徨してまいりました。

ようやく春の兆しの感じられるようになりましたこの頃、霞がかかったようなやわらかい風情の空を見上げながら、この先もう少し彷徨をつづけてみたいと思っております。

坂本絢世

 

 

  • A5版変型/上製本/カバー装/本文110頁
  • 1,800円(本体価格・税別)
  • 2006年5月刊
  • ISBN4-89629-160-3