下学集・節用集研究(日本語辞書研究別刊1) 全3輯

木村晟 著

■刊行のことば

室町時代の三大辞書の中で、『下学集』と『節用集』とは共通した編纂意図に基づいて成立してゐる。従つて同じ辞書史の潮流の中で汲むことのできるものである。共に「語書」「百科全書」「韻事に資する書」等の多用途に供せられる汎用性を有しつつも、特に「韻事」に資すべき性格の濃密な辞書なのである。畢竟室町前期から後期にかけての詩聯・聯句連歌の漸次盛行し行く時代に伴なつて成立し生成して行つた辞書類であると規定することができる。この『下学集』『節用集』中に内包する典籍群を精査することから、その辞書の特徴を見出し、辞書史上の座標を見定めたい。

また、『節用集』諸本中で、『広本節用集』は古本系『下学集』を最も多く受容する所以をもつて、『下学集』と同じ辞書史の潮流の中に『広本節用集』を捉へようと試みる。かつ『広本節用集』は全て五八五丁もの大冊である。この上ない内容の充実振りを示す書であり、実に瞠目させられる。そこで先づはその典拠調査に着手することにした。その結果、本輯に掲載すべき、ほぼ網羅的に近い『下学集』享受の実態を把握した。

而かるに『節用集』の源流の一つである『下学集』の典拠調査が十分になされてゐるとは言ひ難い情況にある。これに気付いた吾人は近思文庫の片山晴賢事務局長と共同で、『下学集』の漢籍典拠群の調査に着手し、その実態を解明したいと考へた。斯くてその委細の一部を本輯に掲載する所以である。

木村晟

 

■目次

第1輯

第一部 『下学集』の典拠資料[一]

第二部 『広本節用集』に受容せられたる『下学集』[一]

第三部 『広本節用集』の「態芸門」に受容せられたる『論語』[一]

第2輯

第一部 『広本節用集』に受容せられたる『下学集』[二]

第二部 『広本節用集』の「態芸門」に受容せられたる『論語』[二]

第3輯

第一部 『広本節用集』に受容せられたる『下学集』[三]

第二部 『塵芥』における『下学集』の享受について[下]

 

 

  • A5判/上製本/糸かがり/函入/本文277〜288頁
  • 各巻9,000円(本体価格・税別)
  • 2003年11月(第1輯)、2004年6月(第2輯)、2005年6月(第3輯)
  • ISBN4-89629-118-2 C3381(第1輯)
  • ISBN4-89629-131-X C3381(第2輯)
  • ISBN4-89629-144-1 C3381(第3輯)