ヘボン著和英語林集成 初版・再版・三版対照総索引 全3巻

飛田良文 著
李漢燮 著

◎本書は、ヘボン著『和英語林集成』の初版・再版・三版の収録語彙を編集した、初めての画期的な対照索引。1ページ内に初版・再版・三版を並列的に配置し、どの語彙が増補されたか、一目瞭然に分かるよう編集してあります。

◎三版見出語数は和英35,618、英和15,697。初版からみて増補語彙数は和英14,846、英和5,667。明治前期の言葉の位相がはっきり写しだされ、近代日本語、英学史、近代辞書学、近代日本文学、近現代史、明治文化史などの学際分野で有用な役割を果たす必備文献です。

◎解説編には、飛田良文、李漢燮による著者・書誌・増補語解説・和英語林集成研究文献目録を掲載。最新の研究成果を収め、今後の研究の基礎資料を提供します。

 

■内容

和英語林集成〈初版〉美国平文(J. C. Hepburn)編訳/日本横浜梓行(上海APMP印刷)/12+558+132頁/1867(慶応3)年刊

日本最初の和英辞典で、その後の和英・英和辞典をはじめ和独・和仏辞典、さらに『和漢雅俗いろは辞典』『言海』など近代国語辞書にはかりしれない影響を与えた。英語で書かれた国語辞典ということができる。『日葡辞書』とメドハーストの『英和和英語彙集』を参考とし、江戸末期の節用集『大日本永代節用無尽蔵』『江戸大節用海内蔵』『大全早引節用集』『和漢音釈書言字考節用集』などの辞書や読書の過程から日本語を収集したが、基本的には医者として接したさまざまな階層の日本人が話したり書いたりした日常語を採集したものを土台としている。〈初版〉江戸幕末、〈再版〉明治維新、〈三版〉明治前期の変化極まりない日本語の実態を伝える貴重な資料で、この時期の第一級国語資料といわれている。医学用語、宗教用語も多い。和文書名『和英語林集成』は、ヘボンの日本語教師岸田吟香が考案した『和英詞林集成』を、ヘボンが修正したものである。見出語数・和英20,772、英和10,030。

 

和英語林集成〈再版〉美国平文(J. C. Hepburn)編訳/横浜

明治維新に伴う社会的政治的変化および西洋の科学・文学・制度の導入によって学問の分野に重要な語彙が増加したので、そのうち広く通用するものを増補している。奥野昌綱が協力した。見出語数・和英22,949、英和14,266。

 

改正増補 和英英和語林集成〈三版〉 J. C. Hepburn編訳/東京・丸善商社書店/33+770+192頁/1886(明治19)年刊

「文明・銀行・郵便・国会・日曜日」など、文明開化とともに作られ広まった言葉を増補するとともに、『古事記』『万葉集』や物語類の古語を加えている。増補および訂正は、見出し語だけでなく、説明・用例・同義語など、すべての部分に及んでいる。この版の収益は横浜の指路教会および明治学院援助のために用いられた。高橋五郎が協力した。見出語数・和英35,618、英和15,697。

 

■刊行にあたって

『和英語林集成』はA Japanese and English Dictionaryの英文題名をもつ日本最初の和英辞典として知られている。著者はヘボン式ローマ字で有名なJames Curtis Hepburn(1815~1911)、漢字名は平文である。ヘボンは一八五九年に来日した宣教医で、まだキリスト教が禁止されていた時代に横浜に住み約八年間の労苦の末に本書を出版した。その目的はキリスト教が解禁されたときに来日する宣教師のために、また聖書の翻訳のための手引書としてであった。

『和英語林集成』は初版・再版・三版と版を重ねるたびに新語を増補したので、今日からみると、日本の近代化、日本の文明開化のありさまを反映した単語の集成ということができる。したがって、日本語史、英学史、辞書史、思想史、文化史、科学史など、さまざまな分野の新語が収録されている。

本書はヘボンが離日してからも、四版、五版、六版、七版、八版、九版と版を重ねたが、第三版と内容は同じである。そこで、初版・再版・三版の同一見出し語を対照させ、一回で三種の内容を見ることができるように対照索引を計画した。

対照索引はすでに李漢燮が手造りのものを作成していたが、そのままでは公にすることができなかった。今回、たまたま、「港の人」の里舘勇治氏の好意ある決断によって、飛田良文所蔵本を底本として新たに対照索引を作成することにした。この索引は、近代日本語、近代日本文学、近代辞書学、また広く明治文化に関心のある方々にとって、基本的研究資料として役立つであろう。

本索引の構成は、索引編と解説編からなり、解説は、著者、書誌、増補語彙一覧、和英語林集成研究文献目録を予定している。 索引編の利用価値は、対照索引組見本から一見して明かであろう。

飛田良文(前国際基督教大学大学院教授・文学博士)

 

■ヘボンについて

James Curtis Hepburn(1815~1911)

ヘボン、平文とも書く。アメリカの長老教会派の宣教医。安政6(1859)年来日。明治25年に帰国するまでの33年間、神奈川と横浜に住み、伝道と施療のかたわら、和英辞典の編集(『和英語林集成』)、新旧訳聖書の翻訳、キリスト教を基礎においた青少年子女教育、教会の建設に力を注いだ。日本文明開化の恩人。『和英語林集成』の普及により英語式ローマ字が広まり、『和英語林集成』三版に使用されたローマ字が、以後一般にヘボン式ローマ字(標準式)と呼ばれている。

 

■本文組み見本

 

 

  • A4判/上製本/糸かがり/函入/総2,000頁
  • 75,000円(本体価格・税別)
  • 2000年1月(第1巻)、2000年9月(第2巻)、2001年7月(第3巻)刊
  • ISBN4-89629-040-2 C3381(第1巻)
  • ISBN4-89629-041-0 C3381(第2巻)
  • ISBN4-89629-042-9 C3381(第3巻)
  • ※品切れ