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『星々の宴』
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■本詩集より「或る犬」
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その古いビルの裏側はバス通りに面していて
悲哀を形にしたような暗い窓々に
人影を見かけることはなかったが
花壇も木もない殺風景なその一角に
一匹の犬がいつも繋がれているのを
私はそのころ
バスで通るたびに目にしていた

犬小屋らしいものは無かった
その代わり 彼のかたわらにはいつも
その等身大ほどの穴が
彼自身の影のように横たわっていた
周辺の土はたいていは
黒く湿っているようだったから
それはたえず掘り返されていたのだろう
彼によって

西日のきつい夏の午後
掘り返したばかりの冷たい土に
腹を沈め
北風の吹きすさぶ冬
掘り返したばかりの土のぬくもりに
身を寄せ
そう 彼はひとつの穴を掘り続けていたのだ
彼のかたわらに
己の生きた証を刻むように

(後略)
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■目次
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出会いの歌
人と人のあいだに
出会いの歌
言葉
沈黙
歌が聞こえる
人は海から
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オレンジ色の時
灯ともしごろに
眠る猫
 (その一)オレンジ色の時
 (その二)その深い眠りが
 (その三)闇を渡る舟
コウモリ
ある春の午後に
百日紅
ブランコの思い出
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風にないしょで
チューリップ
ウグイス
或る犬
叫び ―ムンクの「叫び」に寄せて―
ムカデ
百花繚乱 ―廃屋幻想―
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遠い波音
もういちど
昼の月
水路
波音 ―「タイスの瞑想曲」に寄せて―
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