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『年月のあしあと(四)』
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■本文より
 僕が最も敬愛──というよりもっと単純に大好きな──近代日本の思想家作家は、福沢諭吉と夏目漱石である。一方は慶応義塾の創始者。一方は一高─東大を出て一高と東大の教師になったが、やめて一介の作家として生涯を送った人。共通点は、権力が嫌いで、福沢は明治維新の成立にあれだけ功があったのに、決して政官界に近付かなかった。漱石は日本人として初めて東大の教壇で英文学を講じた人だが、僅か四年で辞めて、朝日新聞の専属作家となった。当時の朝日は今日の社会的権威をもつ朝日とは比べものにもならぬ民間の一私企業に過ぎない。
(中略)
 漱石の学問的業績に対して、文部省(ということは当時としては天皇ということ)が、文学博士を授与しようとした時、漱石は頑なにこれを拒み続けた。これをその当時においても今日においても、スタンドプレーなどと称する人間がいるが、漱石の人も芸術も全く理解していない、自らの低き背丈で巨きな存在を測ろうとする、これも卑しい心情の持主と言う他はない。 (「諭吉と漱石」より)
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■目次
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夏目漱石
諭吉と漱石
夏目漱石文学散歩
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折口信夫(釋迢空)
迢空短歌
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廣津柳浪・廣津和郎
「女子参政蜃中楼」論
廣津和郎と松川裁判
チェーホフと廣津和郎
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雑纂
村八分事件
年月のあしあと
枇杷の花
井筒さんの授業

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