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『漢語辞書論攷』
本書の詳細

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■「はじめに」より
 本書は、明治期に陸続と出版された「漢語辞書」を分析素材として採り上げた。「漢語辞書」の定義については第一章において述べた。(ほぼ)明治期という限られた時期においてのみ盛行をみた「漢語辞書」は「湧水」のようにみえる。「湧水」には「伏流水」があり、湧き出す地点には「条件」があるのだとすれば、「漢語辞書」にも「伏流水」にあたる流れがあって、それが何らかの「条件」によって、明治期に姿を現わしたといえよう。辞書という面からいえば、『節用集』、『玉篇』という「伏流水」にどのような条件が加わって、「漢語辞書」が明治期に姿を現わし、そしてそれがどのように一般的な「漢和辞書」へと繫がっていくのかということがら、また「漢語辞書」が採り上げている漢語の面からいえば、江戸期に形成されつつあった「漢語の層」とどのように重なり合い、重なり合わないのか、ということがらなどがまず追究すべき課題といえよう。
 「漢語辞書」を採り上げているのだから、右で述べたように、「辞書」と「漢語」という両面から検討を加えることを心掛けた。辞書を分析素材とした場合、その系譜的聯関の解明がまず求められることはいうまでもないが、それとともに、その辞書を「辞書体資料」としてとらえ、その辞書が成った時期の日本語に関わる知見を得るための分析素材ともしたい。そのためにはそうした知見をひきだすために有効な「方法」を考える必要がある。本書では、辞書それそのものの追究と同時に、その辞書によって、日本語を考えるということをできる限り行なうようにした。
 本書全体をここで概観しておく。第一章は「漢語辞書のとらえかた」と題して、稿者がどのように「漢語辞書」をとらえようとしているのかについて述べた。「和漢の対置」、「辞書における摸倣と創意と」、「語釈の近さ/遠さ」など、以下の行論のために必要な「考え方/捉え方」を提示した。第二節では、漢語そのものについての整理を試みた。第二章では、『新令字類』を例にして、漢語辞書にどのような辞書体資料が影響を与えているかについて具体的に示した。また第二節、第三節では、影響が指摘されている二つの漢語辞書を対照した。第三章は漢語辞書の増補改訂について述べ、第四章では、明治期の『節用集』と漢語辞書の関わりについて述べ、加えて、これまであまり論じられることがなかった『開化節用集』を具体的に採り上げた。
■目次
はじめに
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第一章 漢語辞書のとらえかた
第一節 辞書体資料としてみた漢語辞書
対訳辞書として漢和辞典をとらえる
漢(語)と和(語)とを対置する
辞書における「摸倣と創意と」
漢語辞書の語釈の近さ/遠さ
語釈の方向性
二つの語釈
漢字辞書から漢語辞書へ
第二節 漢語辞書の漢語
語彙上の明治維新
漢語の新造/新鋳ということについて
『太政官日誌』の振仮名
『太政官日誌』の漢語
古典中国語としての漢語
漢語の層
第三節 漢語辞書の定義
漢語辞書の見出し項目
格の有無
語釈の有無
節用集・玉篇・漢語辞書
第四節 「本書〔ほんじよ〕」をもつ辞書体資料の位置づけ
「本書〔ほんじよ〕」ということ
辞書体資料と非辞書体資料と
『日本外史譯語大全』
重出する譯語
頭字が共通する語釈
辞書体資料の分類
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第二章 漢語辞書の系譜的聯関
第一節 漢語辞書に流れこむもの
『増補文選字引』と『日誌画引新令字類』と
『文選字引』の盛行
『漢語字類』の語釈と『日誌画引新令字類』の語釈と
『増補新令字解』の語釈と『日誌画引新令字類』の語釈と
辞書編輯における「摸倣と創意と」再説
第二節 『漢語字類』と『新撰字類』と
重複する見出し項目
見出し項目のとりこみかた
見出し項目のとりこみかた
『新撰字類』の語釈のことば
『新撰字類』の語釈のことば
第三節 東條永胤増補『増補新令字解』と『漢語二重引』と
『漢語二重字引』について
『増補新令字解』と『漢語二重字引』と
『漢語二重字引』の傾向
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第三章 漢語辞書の改訂増補
第一節 『校正増補漢語字類』
『漢語字類』と『校正増補漢語字類』と
見出し項目の増補
見出し項目の校正
鄙語方言
語釈の改変
第二節 『新撰字類』の増補
増補の概観
語釈について
見出し項目の増減
振仮名について
濁点・半濁点の使用—表音的表記の指向
「かなづかい」ということがらについて
辞書の連鎖
第三節 二つの『文明いろは字引』
改正増補の概観
濁点使用・かなづかいについて
語釈について
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第四章 明治期の『節用集』と漢語辞書と
第一節 明治期刊行の節用集
第二節 『開化節用集』
辞書の混態
見出し項目となっている漢語
時代語
見出し項目と語釈の形式
語釈中に使われている漢語
○印の附された語釈
幾つかの語形について
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おわりに
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あとがき
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